江の島の植物・野草≪オニユリ≫
オニユリは北海道から九州にわたって広く分布する多年草で、野原や道端、海辺の傾斜地などに野生化していますが、古くは中国から渡来したものとされています。
オニユリは北海道から九州にわたって広く分布する多年草で、野原や道端、海辺の傾斜地などに野生化していますが、古くは中国から渡来したものとされています。
江の島の植物・野草≪オニユリ≫
2012年7月14日
オニユリ(鬼百合)Lilium lancifolium
ユリ科ユリ属
ユリ科ユリ属
オニユリは北海道から九州にわたって広く分布する多年草で、野原や道端、海辺の傾斜地などに野生化していますが、古くは中国から渡来したものとされています。花は黄赤色でよく目立ち、美しいので観賞用に、鱗茎(りんけい)は食用や薬用として供され、広く栽培されていたものが野生化したものと考えられています。茎は直立して高さは1~2㍍に、色は暗紫色を呈しますが若いときは白毛が目立ちます。
江の島の車道傍に咲くオニユリ
江の島の草むらに咲くオニユリ
葉は披針形で長さ5~15㌢、葉の脇に黒紫色のむかご(珠芽)をつけます。開花期は7~8月、茎の上部の脇から長い花柄を出して径10㌢の美しい大輪の花をつけます。花びらは6枚ありますが、よく観察すると、内側3枚と外側に3枚の二環になっており、いずれも黒紫色の斑点が目立ち反り返っています。この内側の3枚を内花被片(花弁)、外側の3枚は外花被片(萼片)といい、これらをまとめて花被片と呼びます。被子植物の萼(がく)は花弁をかこむ外側にあり、葉状で緑色になるものが多いのですが、ユリのように花弁と同じになるものもあるのです。中心部には6本の雄蕊と1本の雌蕊が伸びています。
オニユリの茎につく珠芽
わが国に自生するコオニユリ(小鬼百合)はオニユリにそっくりですが、その違いは茎に珠芽(むかご)がつかない、茎が緑色であることなどがあげられます。コオニユリは2倍体で種子ができますが、オニユリは3倍体で不捻性のため種子はできません。いわゆる染色体のセット数が奇数のため正常な減数分裂が起こらず配偶子ができないのです。そのため種子はなく茎につく珠芽と鱗茎により繁殖します。名前の由来は、赤い花を赤鬼に見立てて鬼百合、ユリは茎が細く風にゆら(揺)ぐことによるなどの諸説があります。
花が鉄砲百合に似るタカサゴユリの花
ヤマユリは神奈川県の県花で、かつてはいたるところに自生していましたが、現在は身近なところで見ることはできなくなりました。ユリは万葉集に11首詠まれていますが、その内の1首をここに紹介します。
道の辺の 草深百合の 花笑みに 笑みしがからに 妻と言ふべしや (万葉集巻7-1257 (詠人未詳)
ユリはユリ科のユリ属の総称で世界に約100種が知られ、そのうち日本に自生しているものは15種ともいわれています。
道の辺の 草深百合の 花笑みに 笑みしがからに 妻と言ふべしや (万葉集巻7-1257 (詠人未詳)
ユリはユリ科のユリ属の総称で世界に約100種が知られ、そのうち日本に自生しているものは15種ともいわれています。
神奈川県の県花・ヤマユリ
江の島では植栽されたテッポウユリや、野生化したタカサゴユリなどが7~8月に白い花を開きます。近年、花弁の外側に淡褐色の筋が入らないタササゴユリの雑種を、路傍の草むらの中で見かけるようになりました。この時期、野に咲くユリをぜひ観察してみましょう。オニユリやコオニユリ、ヤマユリの鱗茎は食用になり、また薬用では生薬名をビャクゴウ(百合)といい、滋養、強壮、鎮咳などにも処方されます。
【写真&文:坪倉 兌雄】
記事編集に際しては諸権利等に留意して掲載しております。 2019年3月10日