江の島の植物・蔓性落葉低木《ミツバアケビ》
ミツバアケビはつる性の木本で、江の島では参道の傍らや、海辺の藪の中などでつるを絡ませて這い上がります。
江の島の植物・蔓性落葉低木《ミツバアケビ》
2013年6月18日
ミツバアケビ(三葉木通) Akebia trifoliata アケビ科アケビ属
海辺に建つ遭難者供養塔付近に茂る
ミツバアケビ
ミツバアケビ
ミツバアケビは北海道~九州に分布するつる性の木本で、江の島では参道の傍らや、海辺の藪の中などに自生し、他の樹木などにつるを絡ませて這い上がります。葉は3出複葉で互生し、柄の長さは3~6㌢、小葉は長さ4~6㌢の卵形または広卵形で、先端がややくぼみ、ふちに波状の大きな鋸歯があります。4~5月、葉の間から総状花序をだして、暗紫色の花を開きます。花序の先端に直径4~5㍉の小さな雄花が多数つき、萼片は花弁状で3枚、長さは約2㍉、雄蕊は6本あります。
雌花は花序の基部に1~3個つき、雄花より大きく径は約15㍉、萼片は花弁状で3枚、長さ7~10㍉、雌蕊は3~6本あり、いずれも花に花弁はありません。果実は長さ約10㌢の長楕円形で、秋に紫色に熟して縦に裂け、多数の黒い種子を含んだ白色の果肉が現れます。
雌花は大きく花柄も長い、雄花は小さく花序の先につく
裏参道海側に繁茂するミツバアケビ
名前の由来は小葉が3枚でミツバ、果実が熟すと裂開して中の果肉がよく見えることからアケミ(開実)、あるいはアカミ(赤実)の転語、などの説があります。江の島には同じアケビ科のアケビやムベも自生していますが、アケビの葉の小葉は5個、ムベの小葉は5~7個で葉は両者とも全縁であることから、ミツバアケビと区別できます。アケビの萼片は3個で淡紅色を帯び、果実は熟すと裂開します。ムベの萼片は6個で淡黄色を帯び、果実は熟しても裂開しません。いずれも雌雄同株で、花に花弁はなく萼片が目立ちます。熟した実には甘みがあり生食でき、果肉や若葉は食用になります。乾燥させたミツバアケビやアケビの茎を生薬名でモクツウ(木通)といい、利尿やむくみ解消に用います。乾燥させたムベの根、茎、葉は煎じて利尿や駆虫に用います。
【写真&文:坪倉 兌雄】
記事編集に際しては諸権利等に留意して掲載しております。 2019年3月10日