ツチアケビはラン科の植物で、山野の落葉樹林下や、ササ藪などに生える腐生植物の一つです。
江の島の植物・野草《ツチアケビ》
2013年10月 8日 (写真&文:坪倉 兌雄)
江の島龍野ヶ岡自然の森で(13/07/25)
ツチアケビは北海道、本州、四国、九州に分布するラン科の植物で、山野の落葉樹林下や、ササ藪などに生える葉緑体をもたない腐生植物の一つです。地中から出てアケビに似た果実をつけるので、ツチアケビの名がついたとされています。今年も箱根方面へツチアケビの観察に行きましたが、例年より多くの株に出会いました。ひょっとすると江の島にも、との思いで探し歩いたところ、龍野ヶ岡自然の森の片隅にツチアケビを見つけました。同じ場所に、2本はすでに朽ちて茎の一部が残り、他の2本には果実が5個と9個ついていました。
江の島で見るのは初めてのこと、感慨もひとしお、島民の方にお聞きしたところ、かつては龍野ヶ岡だけでなく、江の島の西浦霊園などでも見かけましたよ、とのことでした。
熟したツチアケビの果実(箱根にて12/10/16)
夏、黄褐色の花を多数総状に開く
受粉後、花柄子房は伸びて膨れる
果実は肉質で小さな種子が多数
寿命が尽きると乾涸びた状態に
ツチアケビには葉緑体がなく、成長に必要な栄養素を自分でつくることができません。ナラタケの生えるような場所に生育しますが、ナラタケの菌糸がツチアケビの根に侵入すると、ツチアケビはそのナラタケ菌を消化して根に栄養分を貯えます。根茎は太く長く横にはい、退化した小さな鱗片葉がつき、地上茎は太くて強く黄褐色を呈し、多肉質で硬く、高さは50~100センチになります。花期は6~7月、茎の上部で枝分かれをして多数の花を総状につけ、黄褐色の花を半開きにしますが、花の向きは一定方向ではなくまちまちです。萼片は長楕円形で長さ1.5~2㌢、側花弁や唇弁は萼片よりやや短めで、唇弁はすこし内側に巻き、ふちは細かく分裂、内面には鶏冠状の隆起線があります。中心にある白い棒状物はずい柱で、雄ずいと雌ずいの合体したものです。果実の長さは6~10㌢で紅色に熟しますが、硬くて熟してもアケビのように裂けることなく、その数は数個から50個以上に及び、まるでソーセージをぶら下げたように見えます。果実の中は肉質で多数の種子が詰まっています。乾燥した果実は生薬の土通草(どつうそう)で、強壮・強精剤などに用います。
記事編集に際しては諸権利等に留意して掲載しております。 2019年3月10日