トベラは常緑の低木で、塩害や乾燥に強く、太平洋側では岩手県以南、日本海側では新潟県以西に自生します。
江の島の植物・常緑低木《 トベラ》
2014年12月10日 (写真&文:坪倉 兌雄)
トベラ(扉・海桐花) トベラ科トベラ属 Pittosporum tobira
葉は枝先で密に互生し革質で光沢がある(江島神社境内で)
トベラは常緑の低木で、塩害や乾燥に強く暖地の海岸に自生し、太平洋側では岩手県以南、日本海側では新潟県以西に自生します。江の島では海辺や参道わき、神社境内、広場や車道わきなど、いたるところで見ることができ、枝や葉を傷つけると臭気があります。よく枝分かれして茂り、高さは2~3㍍、樹皮は灰白色で褐色の皮目が点在します。葉は枝先で密に互生し、長さ5~10㌢の長楕円形で厚く革質で、表面は光沢のある深緑色、中央の葉脈が目立ちます。裏面は淡緑色、ふちは全縁でやや裏側に巻きます。雌雄異株。
4~5月、本年枝の先に集散花序をだし、芳香のある白い花を多数上向きに開き、花は次第に白から黄色へ変化します。花弁は5個で長さは約1㌢、萼片は5個で長さ約3㍉の卵形です。
雄花の花糸は約7㍉で葯には花粉が
西側の海辺に咲くトベラ
岩場に生えるトベラ
白色5弁花で芳香がある
蒴果は3つに裂ける
雄花の雄しべは5個、花糸は約7㍉、葯からは花粉が出ていますが、中央にある子房には膨らみがありません(不稔)。一方、雌花の中央にある子房は膨らんで柱頭は3裂し、そのまわりには発達の悪い雄しべが5本あります。果実は蒴果で1~1.5㌢の球形、11~12月に灰褐色に熟して3個に裂け、赤い粘り気のある種子を数個だします。トベラは潮風や乾燥に強く、つやのある緑の葉を密生することから庭木や公園樹、街路樹や道路の分離帯などにも植栽されています。また葉に薬効成分を含み、はたけ(疥)、しらくもなどの寄生性の皮膚病にも効果があるとされています。 (参考文献、薬になる植物図鑑、柏書房)。和名は根や枝、葉を傷つけると悪臭を発することとから、節分の際などにイワシの頭などとともに戸口に立てて鬼を追い払ったことから「トビラノキ(扉木)」、それが転訛したとされ、学名のtobiraもこれによるとされています。
記事編集に際しては諸権利等に留意して掲載しております。 2019年3月22日