江の島の植物・蔓性多年草 ≪クズ(葛)≫
クズ(葛) Pueraria lobata マメ科クズ属 クズはマメ科の大形蔓性の多年草で、北海道から本州、四国、九州に分布し、繁殖力旺盛で山野のいたるところに生育し、江の島では参道わきや龍野ヶ岡自然の森などで普通に見ることができます。根は澱粉を貯えて長芋状に肥大して長さは1㍍以上に径はおよそ20㌢、茎の基部は木質になります。葉は3出複葉で大きく、ふちは全縁で長さ幅ともにおよそ10~15㌢、裏面は白い毛を密集してざらつきます。蔓の長さは10㍍以上にも達し、他の木や草にからんでこんもりとした藪をつくります。花期は7~9月で、葉腋に花穂をつけ、長さ約2㌢の紅紫色の蝶形花を総状に咲かせ、花後、平たいさやを生じます。豆果は扁平で5~8㌢、さやは褐色の開出毛におおわれます。
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名前の由来は、大和の国・奈良県の吉野の国栖(くず)という地域が、上質の葛粉の産地であったことによるものとの説があります。昭和30年頃までは、田畑のほとりに生えるクズのつるを農作業用の材料などに用いていました。またクズの繊維を用いた布は強くて水に耐えるので葛布(くずふ)にして利用され、現在では静岡県掛川の名産にもなっています。クズは秋の七草のひとつで、季語として俳句にも詠われています。また万葉集にも多く登場しますが、柿本人麻呂歌集に収載された旋頭歌には、クズからつくった着物を示唆する歌があり、平安時代にはすでに衣服などに用いられていたことが伺えます。 (巻7 1272) |