江の島・ツカミヒイラギ
イギリスの貿易商サムエル・コッキングが収集したとされ、江の島サムエル・コッキング苑で見ることができます。
イギリスの貿易商サムエル・コッキングが収集したとされ、江の島サムエル・コッキング苑で見ることができます。
江の島の植物・常緑小高木≪ツカミヒイラギ≫
2017年4月12日 (写真&文:坪倉 兌雄)
ツカミヒイラギOsmanthus heterophyllus var undulatifolius モクセイ科モクセイ属 ツカミヒイラギ(つかみ柊)は、イギリスの貿易商サムエル・コッキング(1845~1914)が収集したとされる常緑の小高木で、江の島サムエル・コッキング苑で見ることができます。この原木の名は昭和8年に故牧野富太郎が命名したとされ、学術上貴重な存在であることから、藤沢市市指定天然記念物(1971)に指定されています。樹高は約2.5㍍で幹回は約0.5㍍。葉は対生し、革質で表面には光沢があり、裏側は薄緑色を呈します。ふちは不規則な波状で、やや反り返ります。葉柄は0.7~1㌢、葉身の長さは3~4.7㌢、楕円形または倒卵状楕円形で、先端の形状は尖ったもの、丸いもの、いびつなものなど色々です。ヒイラギとは異なり、ふちに刺状の鋭い鋸歯はなく、触ったり掴んだりすることができます。11月下旬に葉腋に白い小花を束生、花冠は直径4~5㍉で、4深裂して裂片は反り返るように開き、雄しべの長い花糸が2本花冠から突き出て葯が目立ちます。 | |
中央には雌しべがあり、花柱下部の緑色の部分は子房で頂上は柱頭です(写真参照)。子房は大きく発達することなく、翌年の1月中旬頃までにはほとんどが脱落します。ツカミヒイラギの名は、ヒイラギ(Osmanthus heterophyllus)の変種で、ふちに刺状の鋭い鋸歯がなく、つかんでも痛くないことから「つかみ柊」になったとされています。ヒイラギの葉は革質で光沢があり、葉脈は木質化して伸び2~5対の棘となりますが、老木では先端を除いて全縁のものが多く見られるようになります。ヒイラギの名は、葉の鋸歯が鋭く尖り、触ると痛む(疼ぐ)ことから「疼・柊(ひいら)木」と呼ばれています。この棘のあるヒイラギの葉は邪気を追い払うとし、節分の夜に魔よけとして門にさす風習もあります。 |
2018年5月31日