オニドコロ(別名トコロ)は日本全土に分布し、山野に生えるつる性の多年草で、雌雄異株。江の島の路傍や藪の中などで普通に見ることができます。
江の島の植物・オニドコロ(鬼野老)
2017年07月22日
Dioscorea tokoro ヤマノイモ科ヤマノイモ属
オニドコロ(別名トコロ)は日本全土に分布し、山野に生えるつる性の多年草で、雌雄異株。江の島の路傍や藪の中などで普通に見ることができます。根茎は肥厚してかたく、ひげ根があり横にのびます。茎は右巻きのつるを出して、木や藪などに絡みつき長く伸びます。葉柄は長さ4~7㌢、葉は互生し円心形または三角状心形、無毛で鋸歯はありません。葉先は鋭く尖り、長さ幅とも4~12㌢になります。花期は7~8月、葉のわきから長い花序をだし、淡黄緑色の6花被片の花を多数平開します。雄花序は直立して径は約3㍉、完全雄しべは6個あります。雌花序は下垂して花被片の径は約5㍉、子房下位で花柱は3裂に。珠芽はつきません。果実は倒卵状楕円形の蒴果で、3翼(室)があります。
種子の長さは約4㍉で偏平な楕円形、片側に長楕円形の翼があります。オニドコロの根茎には苦みがあり、有毒成分のジオスコリンなどを含み食用にはなりません。名前の由来は、大きい葉を鬼に見立て、野に生える髭根を翁(老)に例えて「鬼野老」になった、などの説があり、古くから長寿を祝うための正月の飾りにも使われてきました。よく似た同属の「ヤマイモ」の葉は対生して茎は左巻き、花は白色で、葉のわきに珠芽をつけます。カエデドコロの葉は卵心形で3~9裂に、花は橙黄色の花序を垂らすので識別できます。オニドコロは「ところずら」とも呼ばれ、万葉集にも一首詠われています。
皇祖(すめ)神(ろぎ)の 神の宮人 ところずら いや常(とこ)しくに 吾かへり見む (巻七 1133、詠人未詳)
皇祖(すめ)神(ろぎ)の 神の宮人 ところずら いや常(とこ)しくに 吾かへり見む (巻七 1133、詠人未詳)
【写真&文:坪倉 兌雄】
2018年5月31日