祈りの文化善行雑学大学で「祈りの文化~The Power of Rituals(儀礼の力)~」というお話を聞きました。
祈りの文化~The Power of Rituals(儀礼の力)~
2018年6月2日(取材・記事:Tanbakko)
善行雑学大学で「祈りの文化~The Power of Rituals(儀礼の力)~」というお話を聞きました。講師はドイツ出身のミカエル・カルマノ氏(聖園女学園高等学校・中学校の校長、前南山大学学長)。
人間の特徴である「知性」。その一つの側面である「祈る人間」に焦点を合わせ、祈りの文化の深さ(場合によっては問題となること)について一緒に考えようというのが講演の趣旨でした。
人間の特徴である「知性」。その一つの側面である「祈る人間」に焦点を合わせ、祈りの文化の深さ(場合によっては問題となること)について一緒に考えようというのが講演の趣旨でした。
人間社会の基盤となるのが「祈りの文化」
講演は、カルマノ氏の家庭(洗礼式・カーニバルのパレード・マイバウムの祭りなど)や自身が体験した修道生活(神学校での着衣式・司祭叙階とミサなど)での「祈りの文化」の紹介から始まりました。そして日本の祈りの文化と「形」の紹介(剣道・書道・大相撲・南山歌舞伎・五山送り火など)や、「合掌」という一つの簡単な動作に隠れていることへと話は進んでいきました。同じ「合掌」といっても、カトリックとプロテスタントとでは違っていること、インドやタイなど様々な「合掌」の形があることなどが紹介されました。
日本の祈りの文化と「形」の事例として南山歌舞伎を紹介
さらに、他宗教の祭り(「祈りの文化」「儀礼」)に参加することの是非や、「祈り」の語源についての説明、他宗教の儀礼は対立を呼び起こす要因にもなりうること(偶像礼拝・タリバーンとバーミヤンの石仏など)、その中で宗教と儀礼を上手に分ける「祈りの文化」は日本の特徴ではないかとして、牧師とお坊さんの合同演奏、元々の宗教的な儀礼の背景や意味合いが見えなくなっているバレンタインやハロウィーンなどの事例が紹介されました。
「祈り」の語源についての説明
また、近年において見られる「祈りの文化」の変化、「文化・言語・国籍の違い、老若男女といった差異、障がい・能力の如何を問わず利用することが出来る施設・製品・情報の設計」というユニバーサルデザインの儀礼(例えば、「南山大学人類学博物館」「ヨガ」「禅」「四国八十八箇所」など)、「観光地」になってしまった教会・お寺・神社とは別の場所が「祈りの場」に変身していくことなども紹介されました。
教会・お寺・神社とは別の場所が「祈りの場」に変身
「祈りの文化」は今でも、人を結びつける儀礼として社会に貢献する。日常生活を区切りする儀礼(祈り)、人生の区切りをマークする儀礼(祈り)は、時と文化を超えて人間社会の基盤となる「祈りの文化」、と最後に強調して講演は締めくくられました。
【講演を聞いて】
興味深いお話を聞くことができました。講演後の質疑応答も活発でした。カルマノ氏の教育方針は、生徒たちに「考えさせる」こと。私たち聴講生もいろいろと考えさせられるものがあって、活発な質疑応答につながったのではないかと思いました。「祈りの文化」には国々よって多様性があり、その多様性を尊重していくことの大切さを学んだように思いました。まさに「郷に入っては郷に従え」です。
カルマノ氏は2017年4月に聖園女学園高等学校・中学校の校長に就任以来、「校長の声」を聖園女学園ホームページで生徒たちに届けています。これも生徒たちに「考えてもらう」教育方針の一環ではないかと思いました。
2018年06月02日