江の島の植物 (1)
 

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江の島の植物・落葉低木《 イヌビワ 》

2014年4月15日  (写真&文:坪倉 兌雄)
inubiwa-1 雌株は緑色の花嚢から赤色を経て熟すと黒紫色の果嚢になります
イヌビワ(犬枇杷)Ficus erecta クワ科イチジク属

イヌビワは関東以西、四国、九州、沖縄に分布し、海岸近くにも生え、江の島では参道わきや海辺の藪の龍野ヶ岡自然の森などで普通に見ることができます。樹高はおよそ4㍍、小枝を折ると白い乳液がでます。葉は倒卵形で互生し長さ10~20㌢、葉柄は1~4㌢、ふちは全縁で先はとがります。雌雄異株で、本年枝の葉腋にイチジクに似た花嚢が1個ずつつき、雌株の花嚢には雌花のみ、雄株の花嚢には雄花と雌花があります。

雌株の雌花は受粉して種子をつくりますが、雄株の雌花は受粉しても、胚珠はイヌビワコバチ(以下コバチ)の餌となり種子はほとんどできません。8月頃、直径1.5~2.0㌢の黒紫色に熟した雌株の果嚢は食べられますが、赤く熟した雄株の果嚢の中はコバチの住みかで食べられません。花嚢という閉鎖された中で咲くイヌビワの花はコバチによってのみ受粉でき、両者は共生関係にあり、一方が欠けるとお互いに生存することができません。
inubiwa-2江の島の雪の中で撮った雄株の花嚢と冬芽 (26/02/09)
inubiwa-3熟した雄株の果嚢内に種子らしきものはありませんでした
inubiwa-4雌株の熟した果嚢の先端から甘い液
inubiwa-5雌株のしっとりした果嚢内部
inubiwa-6雌株の熟した果嚢内の種子
冬季に花嚢がついているイヌビワは雄株で、雌しべの子房は虫瘤となり、この中でコバチの幼虫は越冬します。
子房のなかで胚珠を食べて成長したコバチの体長は1~2㍉になり、春から夏にかけてまずオスコバチが虫瘤から出てメスコバチのいる虫瘤に穴を開けて交尾します。交尾を終えたメスコバチは上部の出口付近に咲く雄花の花粉をつけて、産卵のために他の花嚢に入り中の雌花の柱頭に卵を産みつけますが、そのときからだについた雄花粉で雌花は受精します。このようにして、雄株では卵から孵化したコバチの幼虫はそこで育ちます。夏になるとイヌビワの雌株には多くの花嚢がつきます。しかし雌株の花嚢の柱頭は雄株のそれより長く、メスコバチの産卵管は胚珠に届きません。雌株に対しては花粉を運ぶことはできても、その中でコバチの子孫を増やすことはできないのです。したがって雌株の子房には虫瘤がなく、種子をつくってイヌビワの仲間を増やしていくことができます。
コバチについて、ここでは概略を記載しましたが、その生態は複雑で興味をそそります。
コバチやオナガコバチの生態について興味をお持ちの方は、ぜひ観察されることをお勧めします。
記事編集に際しては諸権利等に留意して掲載しております。   markenopo 2019年3月22日