江の島の植物 (1)
 

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江の島の植物・野草≪ヘクソカズラ≫

2012年9月8日
ヘクソカズラ(屁糞蔓) Paederia scandens var. mairei アカネ科ヘクソカズラ属

ヘクソカズラは日本全土に分布する多年生のつる草で、藪や道端、生垣など、日当たりのよい場所で普通に見ることが出来ます。つるは他の植物などに左巻きに絡まって1~3㍍に伸び、葉は対生して長さは5~10㌢、楕円形~卵形で先端は尖ります。花期は8~9月、葉腋に集散花序を付けます。花は鐘形の合弁化で約1㌢、筒部と花冠は灰白色で中央部は紅紫色、花冠の先端は浅く5つに裂けて平開します。全草に悪臭があるので“屁糞かずら”と呼ばれていますが、茎や葉を傷付けない限り悪臭を放つことはなく、美しい花を開きます。

120908kazura-1江の島の路傍に咲くヘクソカズラの花
また花の中央が赤くお灸の痕に似ることからヤイトバナ、早乙女(田植え娘)の帽子に似るのでサオトメバナとも呼ばれています。江の島には仲間のハマサオトメカズラ(浜早乙女蔓)も自生しており、花はヘクソカズラとほぼ同じですが、葉がやや厚くて表面に光沢があります。
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灼熱の光を受けて咲き誇る花

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江の島に自生するハマサオトメカズラ

…何の落度も罪もないこの美しい花に“屁糞蔓”とは、ひどく扱き下ろしたものだと思っていたら、属名の「paederia」も、ラテン語の悪臭・汚物を意味する「paidor」が語源とか、いやはや何と言って慰めてやったらよいのか、適当な言葉が見当たらない。 “余計な心配はいらないわ、そんなの屁の河童よ” と憚ることなく微笑むヘクソカズラ、与えられた天命をそのままに、真夏の陽光を全身に浴びて、今、咲き誇るこの花に興味は尽きない… 
タフで繁殖力旺盛なヘクソカズラは「糞蔓」として、万葉集に一首詠まれています。登場する皂莢(さうけふ)は、マメ科の落葉高木で、幹に鋭い刺を持つサイカチ(皂莢)ともいわれていますが、味わいのある歌ではないでしょうか。 

皂莢(さうけふ)に 延ひおほとれる 糞蔓(くそかずら) 絶ゆることなく 宮仕へせむ  (巻16-3855 高宮王)

 植物には、二次代謝物質と呼ばれる物質があり、昆虫や微生物、他の植物から自身を守る防衛手段や、情報伝達としての役割を果たしているとも言われています。二次代謝物質の中には、毒性や特殊な薬理作用をもつアルカロイドや、健康維持に役立つとされるフラボノイド群を含む果物や野菜など、マスメディアなどを通してよく耳にするようになりました。ヘクソカズラの臭はメルカブタンという揮発性のガスで、葉や茎に傷をつけるとオナラ(屁)に似た独特の臭いを放ちますが、これも昆虫などの食害から身を守る為の手段なのです。ヘクソカズラに有毒成分はほとんど無く、全草にアルブチンやペデロシドなどのイリドイド化合物を含むとされ、古くから民間薬として、また肌荒れやお化粧にも用いられてきました。果実は核果で5~6㍉の球形、秋には熟して美しい黄金色となり、飾り物としても利用できます。
 【写真&文:坪倉 兌雄】

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