江の島の植物・ヤマネコノメソウヤマネコノメソウは多年草で、湿気のある林下や用水路わきなどに生え、江の島では参道わきなどで見ることができます。
江の島の植物・ヤマネコノメソウ
2019年2月11日 写真&文: 坪倉 兌雄
ヤマネコノメソウ(Chrysosplenium japonicum)はユキノシタ科ネコノメソウ属の多年草で北海道、本州、四国、九州に分布し、湿気のある林下や用水路わきなどに生え、江の島では参道わきなどで見ることができます。長い柄をもつ根生葉は腎円形で約2㌢、互生してふちには浅い鋸歯があり、全体に毛が散生します。3~4月、10~18㌢の長い花茎を出して1~2枚の茎葉を輪生し、先端に5㍉ほどの花弁のない緑色の花を開きます。花の下には葉状の苞葉が輪状につき、外側の苞葉は大きくて中心に向かうほど小さくなり、やや黄色を帯びます。4枚の萼片は緑色でその基部は黄緑色を帯びます。花が終わると開いていた萼片が立ち上がり、その基部に果実を2個つけます。果実はさく果で長さ約5㍉、熟すと裂開して楕円形の黒い種子が多数、その表面には微細な突起があります。
花後に、花茎の基部(根際)に毛のある珠芽(むかご)をつけ栄養繁殖も行います。ヤマネコノメソウと同属のネコノメソウの草姿はよく似ていますが、前者の茎葉は互生してつき、後者は対生につきます。しかしながらネコノメソウは江の島には自生していません。ネコノメソウ属は日本に14種あるとされていますが、そのなかでもムカゴネコノメ、シロバナネコノメソウ、イワネコノメソウ、ツクシネコノメソウ、ホクリクネコノメソウ、タチネコノメソウなどは日本特産とされています(参考:日本の野草、山と渓谷社)。ヤマネコノメソウの名の由来は、花後の果実が猫の目を連想させる草であることから“猫の目草”で、“ヤマ”には特別な意味はなく、同属の“ネコノメソウ”と区別するためにつけられたものと考えられています。
2019年2月11日