江の島の植物・イタドリイタドリ(虎杖)は、日当たりのよい場所に生え、江の島では海側斜面の藪の中や、広場などの一角で見ることができます。
江の島の植物・イタドリ
2019年8月12日 写真&文: 坪倉 兌雄
イタドリ(虎杖)Polygonum cuspidatumはタデ科イタドリ属の多年草で雌雄異株、北海道、本州、四国、九州に分布し、荒地や斜面などの日当たりのよい場所に生え、江の島では日当たりのよい海側斜面の藪の中や、広場などの一角で見ることができます。春の新芽の茎は柔らかくて、やや酸味がありますが皮をむけばそのまま食べられます。地下茎からのびた茎は中空で節があり、若芽には赤みを帯びた斑点が見られます。茎は枝分かれしながら成長して草丈は50~150㌢になります。葉は互生し、卵形~広卵形で幅は5~10㌢、長さは5~15㌢になり先端は急に尖ります。葉柄の基部につく托葉鞘の長さは約5㍉で早々に落ちます。花期は7~10月、葉腋から枝をだして小さな白色の花を多数つけ花被は5裂します。雄花の雄しべ8個は花冠から飛び出し、雌しべはごく小さくて目立ちません。雌花には3個の花柱と、ごく小さな雄しべがあります。
結実すると雌花の花被片3個は翼状になって果実を包み、果実(痩果)は風にのって散布されます。同属のオオイタドリは中部地方以北の山野に生える大形の多年草で、江の島には自生していません。オオイタドリの茎の高さは3㍍にも達し、葉は大きく裏面は粉白色を呈することから見分けることができます。イタドリは古くから民間薬として、また若芽は天ぷらやあえ物などに用いられてきました。子供の頃、イタドリやスイバの若芽の茎をスカンポと呼び、皮をむいて食べたことがあり、また第二次大戦中、大人たちは乾燥させたイタドリの若葉をタバコに混ぜ、または代用しているのを見た記憶があります。名前は傷口に若葉を揉んで貼ると痛みが取れることから「イタドリ(痛取)」に。漢字の「虎杖」は、茎の節の赤い斑紋を虎の縞模様に、茎を杖に見立てたもの、などの説があります。
2019年8月12日