宮台地蔵』の祀られている宮台地区は古来より経済や信仰の道であった矢倉沢往還の通る歴史ある地域でもある。
続・湘南のお地蔵さま(33)『宮台地蔵』
2019年9月6日 (江ノ電沿線新聞)
『宮台地蔵』 開成町 宮台 中島淳一
宮台地蔵
小田急線開成駅東口から町内巡回バス(平日のみ)に乗り「宮台(みやのだい)地蔵堂前」で降りる。町の南に位置する宮台地区は古来より経済や信仰の道であった矢倉沢往還(やぐらさわおうかん)の通る歴史ある地域で、田畑を潤す水路も多く、紫陽花の似合う水の郷でもある。バス停のある場所は、以前宮台公会堂のあったところで、今はガラス張りの新しいお堂が建ち、その中に宮台地蔵は祀られている。以前は近くの本光寺地蔵堂に安置され、その後公会堂内に移り、平成二十年に地域の人々により現在のお堂に安住の地を得た。木造で右手に錫杖(頭部欠失)、左手に宝珠を持ち、円光背を伴い蓮華座に立つ。総高百十四センチで厨子に納まる。肉身部は漆箔(しっぱく)、着衣部は褐色仕上げ。お顔は穏やかで衣文の表現も丁寧である。また全体のバランスも良く、江戸期に活躍した仏師の作と思われる。明治初期、全国的に訪れた仏像受難の時には、村人からこのお地蔵さまが宮台地区にとって子育守護の大切な地蔵尊であり、村に残してほしい旨の嘆願書が出され、幸いにもその信仰は今に続く。往古より人々の心の拠り所である宮台地蔵、これからもこの地域の子どもたちの未来、そして豊穣なる田畑を見守り続けてほしい。
記事編集に際しては諸権利等に留意して掲載しております。 2019年9月6日