伝統的発酵食品と微生物12月7日藤沢市Fプレイスで「伝統的発酵食品と微生物/腸内細菌の働き」というテーマで講演会がありました。
講演会「伝統的発酵食品と微生物/腸内細菌の働き」
2019年12月13日 (hayatine)
2019年12月7日(土)藤沢市Fプレイスで「伝統的発酵食品と微生物/腸内細菌の働き」というテーマで講演会がありました。日本の伝統的な発酵食品に関与する乳酸菌やカビ、酵母の働き、近年、注目されている腸内細菌、特に、善玉菌といわれる乳酸菌やビフィズス菌を使った発酵乳の保健効果などについて4名の研究者が最新情報を紹介しました。
講演会会場
講演1「漬物と乳酸菌」岡田早苗 高崎健康大学農学部教授・東京農業大学名誉教授
漬物は漬け込む際に塩を入れることで浸透圧により野菜の栄養素が野菜から染み出し、乳酸菌はその栄養素を利用して乳酸を作り酸っぱくなります。しかし塩が貴重な長野県木曽御嶽山のふもとに広がる高原では300年以上前から塩を使わないで漬ける「すんき」という漬物が作られています。
すんきの伝統的な作り方
「すんき」はリンゴ酸を多く含む地元の赤蕪(葉を使用します)を湯通して、乳酸菌を含む乾燥した「すんき」を一緒に入れて、38度に1日保温することにより高温性乳酸菌が働いて赤蕪に含まれるリンゴ酸をコハク酸に変えます。
赤蕪に含まれるリンゴ酸を高温性乳酸菌がコハク酸に変えます。
長年にわたり、「すんき」が木曽の人たちに愛されてきたのは、おいしさを醸し出すために欠かせなかった地元野菜(赤蕪)の伝承と「すんき」を作るための技術の伝承がしっかりとなされてきた結果と考えられます。
すんきは世界に誇るすばらしい乳酸菌発酵食品です。
講演2 「伝統的発酵食品と微生物」小田宗宏 元日本大学生物資源科学部 教授
発酵食品に関わる微生物の話の後、日本の伝統的発酵食品の代表である味噌と日本酒について説明されました。
味噌の分類および主な銘柄、産地
味噌の分類として 米味噌、麦味噌、豆味噌がありますが、それは麹を作る原料がそれぞれ米、麦、大豆だということです。味噌自体の原料はすべて大豆です。豆味噌は全て大豆です。色は熟成期間が長いほど色が濃くなります。
発酵食品の製造法の比較と特徴
ワインは原料のぶどうに糖が含まれるため酵母菌によりアルコール発酵が進みます(単発酵)。ビールは1つ目のタンクで原料である大麦のでんぷんが、大麦が発芽する時にできる酵素により糖化され糖ができます。次のタンクでその糖が酵母菌によるアルコール発酵でアルコールになります(単行複発酵)。日本酒は1つのタンクの中で米のでんぷんを麹菌が糖化すると同時にできた糖を酵母菌がアルコールにします(平行複発酵)。日本酒はそのコントロールが難しいと、されています。
講演3 「発酵乳製品(ヨーグルト・チーズ)とその機能」福井宗徳
(株)明治研究本部 商品開発研究所 発酵開発研究部 部長
(株)明治研究本部 商品開発研究所 発酵開発研究部 部長
人の大腸には40兆個もの細菌が生息しています。1000種以上の腸内細菌がいて、その重さは約1.5kgにもなります。
LB81乳酸菌は腸で働き、おなかの調子を良好に保つ乳酸菌です。
明治ブルガリアヨーグルトLB81の名前の由来はこのヨーグルトの基本的乳酸菌であるブルガリア菌とサーモフィラス菌から付けられました。排便回数が週4回以下の女子大生36名に1日100gずつ2週間、食べてもらった時の結果です。排便回数が摂取前3.2回、摂取中4.5回と増えました。毎日食べ続けることが大事です。
乳酸菌OLL2716(LG21)は胃で働く乳酸菌です。
LG21乳酸菌はピロリ菌を抑制する効果があります。慢性的な胃の不快症状の改善効果もあることがわかってきました。
R-1乳酸菌は免疫細胞を活性化させます。
R-1乳酸菌は免疫賦活作用を有するEPS(菌体外多糖)を大量に産生する特徴があります。EPSには免疫力を向上する効果があります。NK細胞を活性化させます。風邪の罹患リスクを低下させます。
講演4 「腸内細菌と健康長寿 ―ウンチから発見した健康増進物質―」 松本光晴
協同乳業(株)研究所 技術開発グループ主幹研究員
協同乳業(株)研究所 技術開発グループ主幹研究員
腸内細菌叢の乱れは世代を超えて伝わります。一旦食習慣によって失われた細菌叢の多様性は食習慣を変えても取り戻せません。腸内細菌から作られるポリアミンを研究しています。
腸内細菌叢と病気との関係
ポリアミンは母乳に多く、ポリアミンが赤ちゃんの腸を育てると言われています。ポリアミンは20歳をピークに年とともに減少します。60~80歳ではとても少なくなります。しかし90~106歳では逆にポリアミンが多くなります。このことはポリアミンの多い人が生き残っていると言えます。ポリアミンは腸管の炎症を抑える機能、遺伝子保護作用、抗炎症作用、細胞内のゴミを掃除するなど健康寿命を延ばすのに関係しています。
細胞の正常化維持に必須のポリアミン
ポリアミンの多く含まれる食品は納豆、チーズなどがあります。しかし最もポリアミンを作っているのが腸内細菌です。もっと腸内細菌にポリアミンを作らせて健康寿命を延ばしたい。ポリアミンを多く作る物質を絞り込み、アルギニンがいいと分かりました。ビフィズス菌LKM512+アルギニン ヨーグルトは動脈硬化予防効果があります。
ポリアミン供給源としての腸内細菌叢
記事編集に際しては諸権利等に留意して掲載しております。 2019年12月13日