江の島の植物・ラセイタソウラセイタソウ(羅背板草)は日本特産とされ、江の島では海辺の岩場や参道わきなどで見ることができます。
江の島の植物・ラセイタソウ
2020年06月28日 写真&文: 坪倉 兌雄
ラセイタソウ(羅背板草)Boehmeria bilobaはイラクサ科カラムシ属の多年草で、日本特産とされ、北海道から紀伊半島の太平洋岸に分布し、海岸の岩場や崖地などに自生しています。江の島では海辺の岩場や参道わきなどでふつうに見ることができます。茎は太くて株立ちとなり、高さは生育場所により異なり、海辺の岩場で風をもろに受ける場所では10~20㌢、強風や潮風に堪えるために岩場や崖では葉を横に広げ、根をしっかりと岩に張りめぐらしています。海辺や参道わきでは20~70㌢の高さになります。葉は対生につき、葉柄の長さは1.2~5㌢。葉形はゆがんだ広卵形で、長さは6~15㌢、幅は4~9㌢で、質は厚くて緑色、表面の葉脈は凹んで、網目模様になりざらつきます。ふちの鋸歯は小さく丸みを帯びます。
葉の先端は尖り、基部はくさび形。裏面はやや白みを帯びて葉脈がはっきり見えます。花期は7~9月、淡黄緑色の小さな単性花を穂状に密生します。雌雄同株で、雌花序は上部の葉腋につき、雌花が集まって太い穂になり、雄花序は下部の葉腋から穂状に伸びます。花はいずれも葉より上部に出ないので目立ちません。果実は痩果で棍棒状。和名は、葉の表面がポルトガルのRaxetaと呼ぶ毛織物に似ることによるとされています。このラシャ(羅紗)は羊毛による厚い密な毛織物で、室町末期頃から江戸時代を通じてオランダや中国の貿易船によって輸入され、陣羽織・火事羽袋物などに用いたとされています(広辞苑より)。現在では毛織物全般のことをラシャといいます。江の島で見られるイラクサ科カラムシ属の植物には、ラセイタソウの他にアオカラムシ、カラムシ、ヤブマオなどがあり、江の島の参道わきなどで手に取って見ることができます。
2020年06月28日