江の島の植物・イヌタデ日本全土に分布し、道ばたや野原、荒地などに生え、江の島では空き地や広場の片隅、参道わきなどで見ることができます
江の島の植物・イヌタデ
2020年12月10日 写真&文: 坪倉 兌雄
イヌタデ(犬タデ)Persicaria longisetaは、タデ科イヌタデ科の1年草で、日本全土に分布し、道ばたや野原、荒地などに生え、江の島では空き地や広場の片隅、参道わきなどで見ることができます。茎はやや赤みを帯びて、長さは20~50㌢になります。葉は広披針形で長さは3~8㌢、基部はくさび形で先は尖り、裏面の脈上に毛があります。鞘状の托葉は長さ7~8㍉の筒型で、ふちに長い毛があります。花期は6~10月、枝先に小さな紅色の花を多数つけます。花穂の長さは1~1.5㌢。花被は淡紅色、長さは約2㍉で5裂し、花後は紅色になり、そう果を包んで残ります。雄しべは8個、花柱は3裂し、小苞は赤色で、長い線毛が多数花の間から突き出ます。そう果は3稜形で長さは約2㍉、赤色の花被に包まれたまま黒色に熟します。
名前は食用になるヤナギタデに対し、葉に辛みがないことから、役に立たないとし、「イヌタデ」と名付けられたもので、子供が遊びものにする「あかまんま」とも呼ばれ親しまれていました。食用になるヤナギタデは葉に辛味があり、ホンタデとも呼ばれ、茎は40~60㌢になり、花期は7~10月、花穂は細長く茎の上部や枝先について垂れ下がります。また同属のボントクタデは、ポンツク(愚鈍者)の意味で、葉に辛みはなく、茎は50~100㌢、葉の長さは5~10㌢で表面に黒斑がでます。花期は9~10月、花穂は5~12㌢で先は垂れ、花はまばらにつきます。いずれも水辺や湿った場所に生えます。
万葉集に、「ヤナギタデ」を詠んだと思われる歌があります。古幹(ふるから)とは穂蓼を収穫した後の古い茎を意味します。
ほたでふるから お
我が家戸の 穂蓼古幹 摘み生ほし 実になるまでに 君をし待たむ
万葉集巻⒒ 2759 詠人未詳
記事編集に際しては諸権利等に留意して掲載しております。 2020年12月10日