江の島の植物・ヘビイチゴ江の島では参道わきや龍野ヶ岡広場など、やや湿った場所で見ることができます。
江の島の植物・ヘビイチゴ
2021年3月25日 写真&文: 坪倉 兌雄
ヘビイチゴ(蛇苺)Potentilla hebiicigoは、バラ科キジムシロ属の多年草で、日本全土に分布し、道ばた、田のあぜ道や草地などに生えます。江の島では参道わきや龍野ヶ岡広場など、やや湿った場所で見ることができます。茎は走出枝を伸ばして地をはい、節々に子株をつけて繁殖します。葉は3小葉(3出複葉)で、長さは2~3㌢に、小葉は広卵形で、ふちに粗い鋸歯があります。花期は4~6月、葉腋から長い柄をだして、黄色い5弁花を1個つけます。花の径は1.2~1.5㌢、萼片は三角状で5個あり、その外側に萼片より大きい葉状の副萼片が5個つきます。花のあと、花床は膨らみ淡紅色の果床となり、その表面にそう果が多数つき、直径1.2~1.5㌢の果実(偽果)になります。果期には花はありません。果実は赤く熟して無毒ですが、甘みがなく食用にはなりません。
名前の由来は、蛇が出そうな場所に生えるので蛇苺(ヘビイチゴ)に。全草を乾燥させたものを生薬名で蛇苺(じゃも)と呼び、この中国名からヘビイチゴになった。などが考えられています。筆者が子供の頃にはドクイチゴ(毒苺)とも呼び、マムシなどのヘビ(蛇)が出そうな場所に生えるので、このようなところを避けて遊んだ記憶があります。同じキジムシロ属のヤブヘビイチゴ(藪蛇苺)は、龍野ヶ原広場でも見ることができます。ヘビイチゴに似ていますが、やや大形で小葉の長さは3~4㌢に、濃緑色で葉先が尖ります。また偽果は直径1.3~2.0㌢と大きく、光沢があり、果期にも花が見られます。これらが見分け方のポイントになります。また同属のキジムシロは山野に普通に生え、全体に粗い毛があり、匍枝は出ません。葉は根生して5~9枚の小葉を奇数羽状につけ、花は集散状に黄色の5弁花をつけるなど、草姿がヘビイチゴとはやや異なることから見分けることができます。
2021年3月25日