江の島の植物・ヤマブキ江の島では亀ヶ岡広場やサムエル・コッキング苑などで見ることができます
江の島の植物・ヤマブキ
2022年05月25日 写真&文:坪倉 兌雄
ヤマブキ(山吹)Kerria japonicaはバラ科ヤマブキ属の落葉低木で、北海道南部~九州の谷川沿いなど、やや湿った山地などに生え地下茎をのばして株立になり、高さは1~2㍍になります。江の島では亀ヶ岡広場やサムエル・コッキング苑などで見ることができます。新しい茎や枝は緑色、枝には稜があり、やがて褐色の木質になりますが、3~4年で枯れます。葉は鮮緑色で互生し、葉身の長さ4~8㌢の長卵形、質は薄くて先端は鋭くとがり、基部はややハート形、縁には重鋸歯があります。葉脈は裏面に凹み、脈上に伏毛があります。葉柄の長さは8~10㍉で、基部に線形で長さ4~10㍉の托葉があり、花後に脱落します。花期は4~5月、前年枝からのびた新しい側枝の先に、直径3~5㌢の鮮黄色の花を1個つけます。花弁は倒卵形で5個、平開して先は円形でわずかに凹み、基部は急に細くなります。雄しべは多数あり、花柱の長さは約7㍉で5~8個あります。
萼筒は杯形で萼片は5個、長さ約4㍉の楕円形で果期にも残ります。果実はそう果で長さは約4㍉の広楕円形、1~5個が集まってつき、暗褐色に熟します。和名は古くは「山振」の文字があてられ、しなやかな枝が風に揺れる様を見て、名付けられたとされています。同属のヤエヤマブキ(八重山吹)は古くから植えられている園芸品種で、雄しべは弁化して雌しべは退化、実はつきません。江戸城を築いた太田道灌の、有名な話のなかにでてくる山吹は、このヤエヤマブキとされています。
ヤマブキは万葉集にも多く読まれていますが、大伴池主が大伴家持(おおとものやかもち)に贈った歌を一句紹介します。
ヤマブキは万葉集にも多く読まれていますが、大伴池主が大伴家持(おおとものやかもち)に贈った歌を一句紹介します。
山吹(やまぶき)は 日に日に咲きぬ うるはしと 我(あ)が思(も)う君は しくしく思(おも)ほゆ
巻十七 三九七四、 大伴池主(おおとものいけぬし)
記事編集に際しては諸権利等に留意して掲載しております。 2022年05月25日