江の島の植物・カミヤツデ
2023年05月10日 写真&文:坪倉 兌雄
カミヤツデ(紙八手)Tetrapanax papyriferはウコギ科カミヤツデ属の常緑低木で、原産地は、台湾、中国南部、インドシナ半島、日本の沖縄など、温かい地域に自生します。葉は同じウコギ科のヤツデ(Fatsia japonica)に似ていますが、葉はそれよりさらに大きく、葉質は柔らかくて、ヤツデのような光沢がない、などから前者と見分けることができます。カミヤツデは常緑低木で2~6㍍の高さになり、江の島では冬季に落葉するものが多く、場所によっては地上部も枯れることがあります。参道わきで見られるカミヤツデの大部分は雑木として定期的に刈り取られることから、花を見ることはほとんどありません。幹は直立し、若木には軟毛が密生しますが、やがて毛は脱落します。幹に刺はなく髄は太くて白色。葉柄の長さは20~40㌢と長く、褐色の毛が密生します。
綿毛で覆われた蕾
葉の裏面に白い毛が密生
葉柄に淡褐色の毛が密生
葉は単葉で大きく、径30~70㌢の掌状葉、互生して幹先に集まってつきます。葉は7~12片に中裂して、その裂片は矢筈状に裂け、基部は深いハート形になります。葉質は薄くて柔らかく、ふちには粗い鋸歯があり、裏面には白色の毛が密生します。花期は11~12月、枝先に球状の散形花序が多数円錐状に集り、長さはおよそ50㌢に、綿毛に覆われた黄白色の小さな4弁花が多数つき、雄しべは4個あります。花後につく果実は球形で小さく、熟すと中に黒い種子があり、鳥などによって散布されます。大形の葉をつけるカミヤツデは、地下茎をのばして増え、また鳥などによって種子が散布されることから、生態系への影響も懸念されています。しかし江の島では雑木として刈り取られることから、その生育場所もごくかぎられています。名前の由来は、同じウコギ科のヤツデに似るが、葉質が紙のように薄いことからカミヤツデに。かつて茎の髄から書画や造花などに使用するツウソウシ(通草紙)が作られたことによる、などの説があります。カミヤツデは観賞用として、庭木や鉢植えなどで楽しむことができます。
記事編集に際しては諸権利等に留意して掲載しております。 2023年05月10日