名所絵×鳥瞰図の魅力
藤澤浮世絵館で「みわたす絶景 名所絵×鳥瞰図の魅力」が開催されています。

藤澤浮世絵館展示
「みわたす絶景 名所絵×鳥瞰図の魅力」
2023年6月8日(取材・記事:Tanbakko)
藤澤浮世絵館で「みわたす絶景 名所絵×鳥瞰図の魅力」が7月2日(日)まで開催されています。本展では、高い視点から広域をとらえた浮世絵と観光案内図が展示されています。この2つには「鳥瞰図」という共通点があり、上空や高い位置から見下ろすような視点で描かれています。それでは各コーナーの展示内容を紹介したいと思います。
先ずは東海道五十三次コーナーです。このコーナーでは「ご上洛東海道と鳥瞰構図で描かれた東海道の数々」というテーマで、東海道の道のりや宿場を鳥瞰図で描いた名所絵と、「御上洛東海道」と呼ばれるシリーズの浮世絵16点が展示されています。「御上洛東海道」は25の版元による共同企画として刊行され大ヒットした幕末を代表する東海道作品です。16名の絵師が参加、その作品数は162枚にものぼります。本展ではそのなかから9作品を展示しています。


藤沢宿コーナーは、「遠くを眺める 江の島を眺める、江の島から眺める」というテーマで、七里ガ浜や由比ガ浜から江の島を俯瞰的に描いた作品などが展示さています。また、江の島コーナーでは、「鳥瞰の視点を持った絵師たち」というテーマで、藤沢市が所蔵する鳥瞰図を取り入れた浮世絵が展示されています。


最後に企画展示コーナーを見てみましょう。本コーナーのテーマは、「「大正の広重」吉田初三郎と近代の鳥瞰図」です。浮世絵で培われた鳥瞰図の表現方法は、明治以降は「観光案内図」に引き継がれます。大正から昭和にかけて、鉄道や船などの交通が発達すると旅行ブームが起こり、観光案内図の需要が高まりました。
鳥瞰図の視点からの観光案内図の第一人者が「大正の広重」と称された吉田初三郎です。本展では、藤沢市が所蔵する吉田初三郎の作品がコーナー全域に展示されていて壮観です。


かつて日本が支配した大連、樺太、朝鮮金剛山を描いた作品も展示されていて、大正・昭和(戦前)の時代背景がうかがわれます。

関東大震災の翌年に大阪朝日新聞の付録として発行されたものです。
今回の展示を見ての感想ですが、企画展示コーナーの吉田初三郎の作品展示には圧倒されました。日本国内だけでなく、海外の大連・樺太・朝鮮金剛山などを描いた作品も展示されていて壮観でした。個人的には、澤田瞳子さんの直木賞受賞作品『星落ちて、なお』の主人公・とよ(河鍋曉翠)の父親である河鍋暁斎の作品2点(「東海道名所之内 南湖」と「東海道名所之内 鴫立澤」)をじっくりと鑑賞出来たのが良かったです。
なお、藤澤浮世絵館の公式ホームページ(下記)では、展示作品の解説が掲載されています。あわせてご覧ください。 http://fujisawa-ukiyoekan.net/collections/top.html
記事編集に際しては諸権利等に留意して掲載しております。
2023年6月8日
