江の島の植物・キリ
2023年7月20日 (坪倉兌雄)
キリ(桐)Peulownia tomentosaはキリ科キリ属の落葉高木で、原産は中国とされ、古くに渡来し、各地で栽培されて、本州や九州などでは野生化したものもあります。江の島ではサムエル・コッキング苑で見ることができます。日当たりや水はけがよい場所でよく育ち、樹高は8~15㍍になります。樹皮は縦に浅く裂け、灰褐色で皮目が目立ちます。葉は大形で対生し、長さ15~30㌢、幅は10~25㌢、広卵形~5角形で、粘りがある柔らかい短毛が密生します。基部は心形~円形で、葉柄の長さは5~20㌢。花期は4~5月、葉が展開する前に開花し、枝先に大形の円錐花序を直立して、淡紫色の大きな花を多数つけ、萼には茶褐色の毛が密生します。花冠は筒状鐘形で長さは5~6㌢に、先端は5裂して裂片は平開。花冠の外面には軟毛が密生します。雌しべは1本。雄しべは4本あり、うち2本は長く花冠の外に突き出ます。
果実は蒴果で長さ3~4㌢の卵形、先は尖り熟すと2裂して翼のある種子を多数だし、風に乗って散布されます。キリの材質は白くて軽く、木目が細かくて美しいこと、材の空洞が大きくて湿気を通しにくく、タンニンを多く含むので防虫効果があることなどから、箪笥、長持、琴、下駄、楽器や容器などによく用いられてきました。また生長が早いので、かつては娘が生まれたときに植えると、嫁に行く頃には箪笥や長持ちを作れるほどに成長することから、庭などにもよく植えられていました。名前の由来は、「切ってもすぐ芽をだして成長することによる」とされています。街路樹や公園樹として植えられているアオギリ(青桐)をよく見かけますが、これはアオイ科アオイ属の落葉高木で、キリとはまったく異なる種ですが、樹皮が青く、葉がキリ(桐)に似ているのでこの名があります。アオギリの葉は互生し、葉は大きく3~5裂します。花には花弁はなく、花のように見えるのは、5個の細長い萼片です。果実は熟すと舟形の5片に割れ、各片に小球状の種子が載ります。