江の島の植物・ミズヒキ
2023年9月30日 (坪倉兌雄)
ミズヒキ(水引)Persicaria filiformisはタデ科タデ属の多年草(宿根草)で日本全土に分布し、山野の木陰や草地、道端などに生育し、冬季には地上部は枯れますが、翌年そこからまた新しい茎を出します。江の島では参道わきや広場の片隅などで普通に見ることができ、手に取って観察することができます。根茎からのびた茎は枝分かれして伸び、節はやや膨らみ高さは30~80㌢になります。葉は単葉で互生につき、楕円形で長さは5~15㌢、幅4~9㌢、ふちは全縁で先端は尖り、基部は広いくさび形、両面に毛があり、葉の中央に黒い斑紋がつくこともあります。花期は8~10月、茎先から長さ20~40㌢のひも状花穂を伸ばして、小さな花をまばらにつけます。花冠はなく萼片が4個あり、上部3枚の萼片(花被片)が紅色でよく目立ちますが、下側の1枚の萼片は白く、下から見ると白っぽく見えます。
雄蕊は5本、雌しべは1本で、花柱は長く伸び先端の柱頭は二つに割れて釣針状に曲がります。受粉が終わると萼片は子房を包みように閉じ、雌しべの花柱と柱頭は突き出た状態で残ります。果実が熟すとこの鉤状のホックが動物や人の衣類などに引っ掛かって、種子は他の場所へと運ばれます。ミズヒキが生える江の島の湿地帯では、同じタデ科のヤナギタデ(柳蓼)などもよく生育しています。ミズヒキの名の由来は、細長いひも状の花穂に咲く紅白の花(萼片)が、祝儀袋などにつける紅白の飾りの紐に似ることによるとされています。ミズヒキの花は縁起ものとして、茶花や切り花として用いられ、花壇や鉢植えなどにも利用されていますが、最近では真っ白な花をつけるギンミズヒキ(銀水引)なども目にします。ミズヒキとほぼ同じ時期に開花するキンミズヒキ(金水引)はバラ科の多年草で、道端や草地で見ることができますがミズヒキとは全く異なります。葉は5~9枚の小葉からなり、花は黄色の5弁花で細い花穂に多数つきます。
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