藤澤浮世絵館展示「アナザー東海道 東海道の多様と異様な描き方」
2023年10月3日(取材・記事:Tanbakko)
藤澤浮世絵館で「アナザー東海道 東海道の多様と異様な描き方」が開催されています。展示期間は2023年11月5日(日)までです。
浮世絵で東海道といえば、歌川広重の「東海道五拾三次之内(通称:保永堂版東海道)」が有名で、東海道の旅を伝える典型的なイメージとしてその後に描かれる浮世絵に大きな影響を与えました。
今回の展示では、東海道を描いた浮世絵を中心に、版本、絵図、地図、写真などによる様々な東海道の描き方が紹介されています
それでは、各コーナーの展示内容を紹介していきましょう。
◆東海道五十三次コーナー
東海道五十三次コーナーでは、「東海道の旅のイメージと広重の影響」というテーマで、広重の「東海道五拾三次之内」の浮世絵を中心に展示されています。「東海道五拾三次之内」は、「藤沢 遊行寺」を除き高見沢版画研究所が制作した復刻版が展示されています。
そのほか、やじきたの東海道中膝栗毛、雪江や長谷川貞信による広重のコピー作品、歌川国貞(三代豊国)や歌川芳員の浮世絵などが展示されています。
左は東海道五十三次コーナーの展示風景。広重の「東海道五拾三次之内」復刻版(藤沢 遊行寺を除く)が展示されています。
右は、仮名垣魯文作・落合芳幾画による「東海道中栗毛弥次馬」と十返舎一九作・画の「東海道中膝栗毛」の展示です。
◆藤沢宿コーナー
藤沢宿コーナーは「歴史を重ねる東海道の描き方」というテーマで、おもに明治以降の東海道を描いた画帖や絵巻などが展示されています。浮世絵とは異なる表現ですが、東海道が時代とともに変化していく歴史を伝える貴重な資料ともいえます。
左は、明治24年(1891年)制作の、亀井竹二郎画・大山周蔵発行「懐古東海道五十三驛之真景」の展示です。
右は、東京漫画会が大正10年(1921年)に制作した「東海道五十三次漫画絵巻 上」の展示です。東京漫画会には岡本一平(岡本太郎の父親)が参加していました。
◆江の島コーナー
江の島コーナーには「江戸時代の様々な技法による絵画」というテーマで、銅版画や泥絵、ガラス絵などの作品が展示されています。銅版画は木版画よりも微細な描き方が可能なため、極小サイズの絵として人気がありました。泥絵は西洋の油絵のような厚みのある絵具のことを表した言葉で、主に「のぞきからくり」で利用されていました。
◆企画展示コーナー
企画展示コーナーは「多様と異様な東海道」というテーマでの展示です。「のぞきからくり」が入り口に展示されていて、泥絵の作品を見ることができます。
このコーナーの展示の中心は歌川芳重作「東海道五十三駅 鉢山図絵」です。
鉢山図絵は大阪の知識人・木村唐船が作った「鉢山」を絵画化したものです。唐船は、歌川広重が東海道を描いた名所絵をもとに風景や宿場を「鉢山」で表現しました。鉢山図絵の鉢が全て異なる描き方をされているのも見どころの一つです。
そのほか、屏風にえがかれた東海道五十三次や、東海道五十三次図染付鉢(伊万里焼)や金銀蒔絵組盃(復元品)なども展示されていてみどころ満載です。
◆同時開催「アナザー東海道 広重研究者による、もう一つの物語」
藤沢市民ギャラリー常設展示室で「アナザー東海道 広重研究者による、もう一つの物語」が同時開催されています。
渡り鳥の研究者であり広重の研究者でもある池内俊雄氏が調べた歌川広重の下絵と浮世絵の相関関係を示す展示です。また、広重の東海道上京に関する池内氏の論考も紹介されていて興味深い展示となっています。
「アナザー東海道 広重研究者による、もう一つの物語」概要
・会 期:2023年9月12日(火)~11月5日(日)
・会 場:藤沢市民ギャラリー常設展示室
(ODAKYU湘南GATE6F 南市民図書館フロア内)
・時 間:平日 10:00~20:00
土日祝 10:00~18:00
・閉館日:10月16日(月)
◆学芸員によるみどころ解説が10月22日(日)に行われます。
・開催日:10月22日(日)
・時 間:11:00~/15:00~
(各回同一内容)
・場 所:藤澤浮世絵館多目的室
・定 員:各回30人(当日先着順)
・参加費:無料
藤沢市は東海道の6番目の宿場町であったということもあって、東海道に関する浮世絵や各種資料を数多く所蔵しているとのことです。今回の展示は浮世絵だけでなく、各種郷土資料なども展示されていて、各コーナーとも見応えがありました。特に企画展示コーナーの展示は圧巻でした。また、藤沢市民ギャラリーの展示も興味深いものがあります。是非とも、藤澤浮世絵館と藤沢市民ギャラリーに足を運んでいただければと思いました。
記事編集に際しては諸権利等に留意して掲載しております。☑ 2023年〇月〇日