江の島の植物・ムラサキハナナス
2023年10月30日 (坪倉兌雄)
ムラサキハナナス(紫花茄子)Solanum rantonnetiiはナス科ナス属の常緑低木で、原産地は南アメリカのアルゼンチン~パラグアイとされ、ソラナム・ラントネッティとも呼ばれています。常緑の低木で高さは2~3㍍になりますが、地上部が柔らかい木質で、一見したところ草本に見えます。江の島では、中津宮境内から亀ヶ岡広場に向かう石段のわきで、鉢植えされたムラサキハナナスの花を見ることができます。数年前から観察を続けていましたが、今年も紫色の美しい花を、ひっそりと開いていました。茎には角があり条線が見られます。葉は単葉で互生、葉身の長さは4~12㌢、幅2~3㌢の卵形~披針形で濃緑色、葉質は柔らかく葉縁はやや波うち、葉の先端は尖ります。葉の基部はくさび形で、葉柄の長さは約2~4㍉、葉の葉裏はやや白っぽく見えます。
花期は6~10月ですが、適度の温度があれば通年開花します。葉腋から2~3㌢の長い花柄をのばし、径2~3㌢の花を2~5個開きます。花冠は暗青色~紫色で平開し縁にはしわがあり、花冠の内側には5本の太い濃色の筋が入ります。中心部の黄色く見えるのは雄しべの葯で、花粉を生ずる嚢状の部分、その中心部に花柱(雌しべ)があります。果実は液果で赤く熟し、垂れ下がりますが食用にはなりません。栽培は比較的容易で、挿し木などで繁殖させることができます。耐寒温度は5℃で、霜が降らない暖地では戸外での越冬が可能で、地植えには日当たりや水はけのよい場所を選びます。しっかり根付いていれば、以後水やりの必要はほとんどありません。そうでない地域では鉢植えにして、冬季は霜の当たらない場所にうつし、土が乾いたら水をやります。刈り込みにも強く、樹形が乱れたら剪定をして整えます。和名の由来は、ナス科の樹木で紫色の花を咲かせることによります。
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