江の島の植物・アキニレ
2023年11月10日 (坪倉兌雄)
アキニレ(秋楡)Ulmus parvifoliaはニレ科ニレ属の落葉高木で、わが国では中部地方以西~四国、九州の山地や河原などに生える落葉高木で、樹高は10~15㍍になります。若い樹皮は灰褐色で皮目が散在し、成長とともに表面がうろこ状にはがれ落ちます。江の島では北緑地や西緑地などの広場に植裁されており、樹高はおよそ3~5㍍、樹皮は灰褐色で小さな皮目があり、鱗片状にはがれて、まだらな斑紋が見られます。葉は互生し、葉柄の長さ3~8㍉、葉の基部は左右不対象で、葉身は長さ2~5㌢、幅1~2㌢の倒卵形~長楕円形、ふちには鈍鋸歯があります。葉の表面には光沢があり、主脈からでる葉脈は葉縁に達します。裏面には葉脈が突出し、両面とも脈腋に沿って毛があります。花期は9月、本年枝の葉腋に淡黄色の小さな両性花を4~6個束生します。
花は小さく、花被は鐘形で深く4裂に、花被片の長さは約3㍉、雄しべは4個あり、伸びた花糸は花被から突き出ます。雌しべは1個で、柱頭に白毛があり先端は2裂に。花後につく果実は翼果で長さは約1㌢の扁平な広楕円形、10~11月に熟します。種子には膜質の翼があり、風にのりとばされて繁殖します。和名の由来は、「秋に花が咲き、実がなり、樹皮を剥ぐと粘液で濡れたように見えることからアキニレ(秋楡)に」、またニレは朝鮮語のヌルム(nulum)の転訛などの説があります。アキニレは樹形や樹皮がケヤキに似て、材が石のように硬く、河原などによく生えることからイシゲヤキ・カワラゲヤキとも呼ばれています。街路樹や公園樹としてよく植えられ、建築材や器具材に、また盆栽などにも用いられています。仲間のハルニレ(Ulmus davidiana var. japonica)は、北海道~九州に分布し、葉身は、長さ3~12㌢の倒卵状楕円形で、4~5月に開花し、果実は5~6月に熟します。
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