江の島の植物・ビワ
2023年11月30日 (坪倉兌雄)
ビワ(枇杷)Eriobotrya japonicaはバラ科ビワ属の常緑高木で、古い時代に中国から渡来したとの説がありますが、わが国では四国、九州に野生種がみられ、その改良種が果樹として、東海地方以西、四国、九州の暖地で、果樹として広く栽培されています。江の島では、江の島大師の境内などで見ることができます。樹高は6~10㍍になり、幹の途中からよく枝分かれして、上部が広がった樹形になります。若木の樹皮はやや緑っぽい灰褐色で、成長すると灰褐色になり、若い枝には褐色の綿毛が見られます。葉は枝先に集まって互生し、葉の長さは15~20㌢、広倒卵形~狭倒卵形で革質、先端は尖り基部はくさび形、縁に粗い鋸歯があり、葉裏に褐色の毛が密生します。
花期は11~12月、枝先に芳香のある白い小さな花を多数、円錐状につけます。花の直径は約1㌢で、白色の花弁が5個あり、花柄、苞、萼に褐色の綿毛が密生します。果実はナシ状果で、4~5㌢の卵形、表面は軟毛で薄く覆われ、果実の中には3~5個の種子があります。翌年の5~6月に黄褐色に熟し、頂部に曲がった萼片が残ります。果実は食用になりますが、未熟な果実は、ウメやアンズなどと同じで、天然の有害物質シアン化合物を含むことから、熟したものを食用とします。
葉を乾燥させたものを、生薬名で枇杷葉(びわよう)とよび、下痢や咳止め、打ち身や捻挫、湿疹などに効果があるとされています。材は乾燥させると硬くなり、杖や木刀、櫛や印鑑などに利用されます。ビワ(琵琶)の名前は、葉や実の形が楽器の琵琶に似ていることによるとされています。
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