江の島の植物・カンツバキ
2023年12月10日 (坪倉兌雄)
カンツバキ(寒椿)Camellia sasanqua ‘Shishigashira’は、ヤブツバキとサザンカの交雑種とされる園芸品種で、常緑低木。品種名はシシガシラ(獅子頭)で日本固有種、関東では一般にカンツバキと呼ばれ、刈り込みに強いことから、庭木や垣根などにもよく使われています。江の島では、参道わきや神社境内、サムエル・コッキング苑、緑地広場や龍野ヶ丘広場などで、植栽されたカンツバキを見ることができます。樹高は1~3㍍、樹皮は灰褐色で平滑、本年枝の若い枝には短毛があります。葉は互生し、長さ2.5~6㌢の長楕円形で、先端は尖り、基部はくさび形、表面は光沢のある濃緑色で裏面は淡緑色、ふちに鈍い鋸歯があり、葉縁はやや裏側に反り返ります。花期は 11月から翌年の2月、花は桃紅色の八重咲で直径6~8㌢。
花弁は10~18個で大小があり、先端は浅く裂けて、ふちは波うちます。白い花を咲かせるサザンカの野生種は、本州の山口県と、四国、九州、沖縄に分布する日本固有種で、ツバキ(Camellis japonica)との交雑によって多くの園芸品種が生み出されてきました。ツバキの花弁は5個で、雄しべが多数あり、花糸の下半分は筒状に合着し、その基部は花弁と合着してカップ状になります。散るときも花弁がバラバラにならないで、そのまま丸ごと落ちます。一方、カンツバキの花弁は多数あり平開し、サザンカと同じで花弁はバラバラになって散ります。これが見分け方のポイントの一つです。サザンカとカンツバキをはっきりと見分けるのは困難であり、本稿ではカンツバキとして紹介させていただきました。カンツバキ(寒椿)の名は寒い季節に咲く花に由来します。常緑で艶のある葉と、冬季にも赤や白などの美しい花を開くことから、庭木、公園樹、盆栽などに、材は詰まって堅く彫刻材や器具材に用いられます。
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