江の島の植物・アセビ
2024年01月10日 (坪倉兌雄)
アセビ(馬酔木)Pieris japonica subsp. japonicaはツツジ科アセビ属の常緑低木~小高木で、わが国では本州(宮城県)以南~四国、九州に分布し、山地の日当たりのよい場所に生え、また観賞用として各地の庭や公園などにもよく植えられています。江の島では広場やサムエル・コッキング苑などで普通に見ることができます。樹皮は灰褐色で、やや捩じれて縦に裂け目が入り、高さは1~9㍍なります。葉は枝先に集まって輪生状につき、葉の長さは3~8㌢、幅1~2㌢の倒披針形~長楕円形で厚い革質、先端は尖り基部はしだいに細くなります。葉の表面は緑色で光沢があり、裏面は淡緑色、葉の上部に浅い鋸歯があり、縁はやや波打ちます。葉柄の長さは2~6㍉。花期は3~5月で、枝先の葉腋から10~15㌢の円錐花序をだし、白色の花を下向きに多数つけて垂れ下がります。
花冠は壷型で長さは6~8㍉、その先端は浅く5裂します。雄しべは10個で花糸には短毛があり、葯に刺状の突起が2個あります。子房上位で雌しべは1個、長さは花冠とほぼ同じ。萼は緑色に赤色がまじり5深裂します。果実は蒴果で直径5~6㍉の扁球形で上向きにつき、9~10月に褐色に熟して5裂し、長さ2~2.5㍉の種子をだします。アセビは茎・葉・花に有毒成分をふくみ、誤食すれば嘔吐、下痢、けいれん、呼吸麻痺などを起こすとされています。かつては煎液を、農耕馬や牛などの皮膚の寄生虫駆除に用い、また便槽に入れてウジの駆除に用いたこともあります。名前の由来には、馬が食べて中毒を起こし酔った状態になったことによる、などの説があります。万葉集にはアシビとして詠われています。
磯の上(うえ)に 生ふる馬酔木(あしび)を 手(た)折らめど 見すべき君が 在りと言わなくに
万葉集巻二 一六六、大(おほ)来(くの)皇女(ひめみこ)
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