北斎と門弟たちの藤沢・江の島
2024年1月15日(取材・記事:Tanbakko)
藤澤浮世絵館で「北斎と門弟たちの藤沢・江の島」が2月25日(日)まで開催されています。葛飾北斎といえば「冨嶽三十六景」が有名ですが、藤沢宿や江の島を描いた作品も多数あります。今回の展示では、北斎や北斎の弟子たちの作品が数多く展示されています。
それでは各コーナーの展示内容を紹介しましょう。
◆東海道五十三次コーナー「北斎の藤沢と東海道」
東海道五十三次コーナーは、北斎が描いた藤沢宿や東海道の宿場の浮世絵が展示されています。
北斎は7種類の東海道五十三次シリーズを手掛けていますが、主に旅人の姿やその土地で暮らす人物、そして土地の名物などを描いているのが特徴です。北斎が活躍した文化・文政時代は、人々の東海道へ関心は主に旅に必要な情報にあったことを反映しているとのことです。例えば「藤沢 平塚へ三里半」というように、次の宿場への距離がタイトルに書きこまれています。
展示で目についたのは、葛飾北斎 画 玉養堂若林喜兵衛 版の「北斎翁道之志遠里」と、北斎の弟子である魚屋北渓(ととやほっけい)の「狂歌東関駅路鈴」でした。
「北斎翁道之志遠里」は文久2年(1862年)のものが展示されていますが、その原型は享和4年(1804年)に狂歌入りで出版されています。北斎の高い人気の故に狂歌をはぶいて何度も出版されたとのことです。
魚屋北渓の「狂歌東関駅路鈴」は、東海道五十三次の宿場風景に狂歌を載せた狂歌絵本です。
◆藤沢宿コーナー「北斎漫画と門弟たちの版本 そして北斎の親友?馬琴の版本」
藤沢宿コーナーは、北斎漫画、北斎や門弟たちが挿絵を描いた版本などが展示されています。
北斎漫画は、人間の体の動き方や、動植物、歴史の登場人物などありとあらゆる物が描かれていて、絵師などの指南書として絶大な人気を博しました。北斎の死後も刊行が続き、全15巻が完成したのは明治11年(1878年)でした。ヨーロッパのジャポニズム(日本主義)の火付け役の一つとしても知られています。
「読本」は江戸時代の小説の一種です。北斎や門弟たちは「読本」の挿絵を数多く描いています。今回の展示では、北斎の友人として知られている滝沢馬琴の作品をはじめとして多くの版本が紹介されていて、本展のみどころの一つでもあると思いました。
◆江の島コーナー「江戸の七福神」
江の島コーナーは、お正月にふさわしくさまざまな描かれ方をした七福神の作品が展示されています。幕末期の人気絵師・歌川国芳が七福神をそれぞれ女性に見立てたシリーズから「七婦久人 恵比寿」など3点が展示されています。その他にも、十辺舎一九、歌川広重、歌川国貞(三代豊国)の作品なども展示されていて見ごたえがあります。
◆企画コーナー「北斎と門弟たちの藤沢・江の島(浮世絵と摺物)」
企画コーナーは、北斎と門弟たちが藤沢と江の島を描いた浮世絵と摺物が展示されています。
摺物(すりもの)とは私家版として作られた木版画で非売品です。紙質も良く高価な絵の具を使用して贅を凝らして作られています。俳句や狂歌を詠むグループなどからの依頼で作られることが多く、中には藤沢在住の狂歌師の名前も見つけることができるとのことです。
葛飾北斎の作品をはじめとして、北斎の弟子・魚屋北渓の「江島記行」など摺物の作品が数多く展示されています。作品に施された繊細な彫りや摺りなどの高い技術をじっくりと鑑賞するのも本展のみどころの一つだと思います。
◆おまけコーナー「冨嶽三十六景」
北斎といえば「冨嶽三十六景」ですが、藤沢市の所蔵は2点(「七里浜」と「江の嶌」)にとどまります。そこで、おまけコーナーでは、昭和57年に共同通信社から発行された画集「富嶽三十六景」から神奈川県内の6点を展示しています。印刷物ではありますが北斎の素晴らしい絵を鑑賞することができます。
◆学芸員によるみどころ解説が2月4日(日)に行われます
・開催日:2月4日(日)
・時 間:11:00~/15:00~
(各回同一内容・30分程度)
・場 所:藤澤浮世絵館多目的室
・定 員:各回30人(当日先着順)
・参加費:無料
なお、藤澤浮世絵館のホームページで展示作品の解説が展示期間中掲載されていますので合わせてご覧ください。 ⇒http://www.fujisawa-ukiyoekan.net/f/collections-index/
記事編集に際しては諸権利等に留意して掲載しております。☑ 2024年1月14日