江の島の植物・スズメノヤリ
2024年01月30日 (坪倉兌雄)
スズメノヤリ(雀の槍)Luzura Capitataはイグサ科スズメノヤリ属の多年草で、日本全土に分布し、各地の山野の草地に生育しています。江の島では広場の片隅の草地や、龍野ヶ丘広場などで見ることができます。日当たりの良い草地に生え、根生葉の長さは8~14㌢、幅2~6㍉の披針形で、縁に白色の長い毛がつきます。茎の高さは8~25㌢になり、2~3個の短い茎葉がつき、この葉鞘(ようしょう)は合着して筒状になり、縁に白色の毛が目立ちます。葉の質は堅く、一番下につく苞葉が花序の上に突き出て、槍の穂先のように見えます。花期は4~5月、茎の先端に多くの花が集まった赤褐色の頭花を1個つけ(まれに2個付くこともある)、頭花の長さは約1㌢になります。花被片は赤褐色で長さは2~3㍉の長楕円形、雌性先熟で、雌しべが伸びて柱頭が3裂し受粉すると、雌しべはしなびて褐色になります。
つづいて雄性期に移行し、花被片が開いて、熟した6個の黄色い葯が目立ち花粉を飛ばします。蒴果は花被片とほぼ同じ長さで2~3㍉に、種子は3個あります。名前の由来は、茎の先端につく花序が大名行列のときの“毛槍”に似ており、著しく小さいことから“スズメ”を付けたもの、とされています。イグサ科、イネ科、カヤツリグサ科の植物は、いずれも風媒花で、果実は蒴果です。しかしイグサ科の植物には、イネ科やカヤツリグサ科に見られるような小穂はありません。
スズメを冠した野草は江の島の広場や海辺などでも見られ、スズメウリ(ウリ科)やスズメのエンドウ(マメ科)の他に、イネ科ではスズメガヤ、スズメノテッポウ、スズメノチャヒキ、スズメカルガヤ、スズメノカタピラ、スズメノヒエなどがあります。
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