江の島の植物・マンサク
2024年02月10日 (坪倉兌雄)
マンサク(満作)Hamamelis japonicaはマンサク科マンサク属の落葉小高木、日本原産で主に本州、四国、九州の太平洋側の山地で見られます。江の島ではサムエル・コッキング苑で見ることができます。幹は根元から株立ち状になり、樹高は5~6㍍で、樹皮は灰色~灰褐色。葉は互生して、葉柄の長さは4~13㍉、葉の長さは5~11㌢、幅3~7㌢の菱形状円形~広卵形、質は厚く、基部は左右で形が異なります。葉の表面はややしわがあり、縁の上部には波状の粗い鋸歯が見られ、葉先は尖ります。葉脈は裏面に出て、脈上には星状毛があります。花期は2~3月、葉に先駆けて、前年枝の先に、黄色の花が咲きます。花弁は黄色の細長い線形で4個あり、長さは1~1.5㌢。雄しべは4個で短く、その内側に4個の仮雄しべがあります。葯は暗赤色。雌しべは1個で花柱は2つに分かれます。
萼は4裂し、萼片の長さは約3㍉で反り返り、内側は暗赤紫色、外側は褐色の短毛が密生します。蒴果は直径約1㌢の卵状球形で、短い腺毛が密生し、熟すと裂けて黒い2個の種子を出します。種子は長楕円形で長さは約8㍉、黒色で光沢があります。秋にはマンサクの黄葉がよく目立ちます。マンサクの葉にはタンニンなどの薬効成分があり、民間療法では止血、消炎、収斂などに用いられていました。和名は、黄色い花を枝いっぱいに咲かせるので「マンサク(満作)」に。山で“まず咲く”がなまって「マンサク」になった、などの説があります。マンサクは太平洋側に分布しますが、仲間のマルバマンサク(Hamamelis japonica var. obtusata)は主に積雪の多い日本海側の山地(北海道西南部~日本海側の鳥取県)に生えます。両者の違いは葉先で見分けることができます。マンサクの葉先はやや三角状にとがりますが、マルバマンサクの葉は半円形。また幹や枝には柔軟性があり、折れにくく、積雪にも耐えることができ、樹皮は農作業用の縄や、合掌造りの家屋を組む「ねそ」としても用いられてきました。
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