続・湘南のお地蔵さま(86)『切り株地蔵』
2024年2月9日 (江ノ電沿線新聞)
続・湘南のお地蔵さま(86)『切り株地蔵』
海老名市 国分寺南 中島淳一
海老名駅からバスに乗り東国分で下車。少し戻り信号を右に入ると、すぐに太い切り株の中にすっぽりと納まった石のお地蔵さまと出会う。まさに「切り株地蔵」である。元々は別の場所に祀られていたのだろうが、もっと多くの人々にお地蔵さまの慈悲の心が届くようにと、人通りの多い道路に面した古木の切り株の中に祀ったのではないだろうか。
舟形の光背をつけお顔は永い年月の間に目鼻立ちもわからない程に風化しているが、胸前でしっかりと合掌する。光背に彫られた銘文から江戸時代の寛政三年(一七九一)に造られたようである。海老名市では市内に残る地蔵尊全体の調査をしているが、そこにはこの像と思われるものは見当たらない。当時は調査対象から外れた個人墓地等に祀られていたのかもしれない。
お地蔵さまの北側一帯は自然の地形や樹木を残した伊勢山自然公園となっており、公園へ向かう家族が珍しそうに切り株をのぞき込んでいた。
瀬戸内寂聴が住職を務めた岩手県の古刹天台寺境内にはたくさんの杉の切り株があり、それぞれに豆地蔵が祀られている。本意でなく切り倒された木々の魂を鎮めるためというが、切り株地蔵も同じ思いで祀られたのであろうか。