江の島の植物・ゲンカイツツジ
2024年02月20日 (坪倉兌雄)
ゲンカイツツジ(玄海躑躅)Rhododendron mucronulatum var. ciliatumは、ツツジ科ツツジ属の落葉低木で、カラムラサキツツジ(唐紫躑躅)の変種と推定され、葉の展開前に開花します。わが国では岡山県以西の本州、四国、九州北部、対馬の山地に自生します。江の島ではサムエル・コッキング苑に植栽されており、手に取って観察できます。幹は分枝して、枝は細く曲がりくねって伸び、樹高は1~2㍍に、若い枝には赤褐色の線状鱗片と白色の軟毛が見られます。3月の上旬、新葉が展開する前に、枝先に淡紅色の花が1~数個まとまって開きます。花冠は広い漏斗形、先端は5深裂して直径3~4㌢、花弁の外側に軟毛が散在します。雄しべは10個で、花糸の基部に白色の軟毛がありますが、花柱は無毛です。花が終わると、枝先に葉が集まって開きます。
葉は単葉で互生し、葉身は楕円状披針形で両面や縁に腺状鱗片と毛が密生します。葉の長さは2.5~6.5㌢、幅1.2~3㌢、縁は全円で葉先はとがります。基部はくさび形で葉柄の長さは0.3~0.6㌢。葉の表面は黄緑色で裏面は淡緑色、両面には多数の腺点が見られます。果実はさく果で長さ約1.5㌢の円柱形、表面に腺状鱗片が密生します。和名のゲンカイツツジの名は、「玄界灘をはさみ、九州北部に多く自生するツツジ」で、ツツジは花が筒状であることに由来する、との説があります。
ツツジは古くから親しまれてきた花で、万葉集にも多く詠まれていますが、ここに一句紹介させていただきます。
水伝ふ 磯の浦廻(うらみ)の 石つつじ もく咲く道を またも見むかも (巻二 一八五、)
記事編集に際しては諸権利等に留意して掲載しております。 2024年02月20日