続・湘南のお地蔵さま(88)『白幡身代り地蔵』
2024年4月9日 (江ノ電沿線新聞)
続・湘南のお地蔵さま(88)『白幡身代り地蔵』
横浜市 白幡町 中島淳一
東急東横線白楽駅西口を出て商店街を右へ少し行くと小さな地蔵堂があり、白幡身代り地蔵が祀られる。前の道は江戸時代に川崎市溝口と神奈川宿を結んだ旧綱島街道である。この地蔵尊には次のような伝説が残る。昔尾張の国から幼い兄妹が府中に住む叔父を訪ね旅をしていたが、このお堂の前で強盗に襲われた。しかし二人は地蔵尊の陰に隠れたため刀がその首を切り落とし、刃は折れ強盗に刺さり地蔵尊は返り血で真っ赤に染まった。以来地元の人々は身代り地蔵として篤く信仰するようになったという。現在は帽子や大きな涎掛けのため全体の様子は見えないが、蓮台上に凹凸のある四角い自然石が立っているようにも見える。それは意図的なものなのか、永年の風雨のためなのかは定かでないが、その存在感は拝む者を圧倒する。
このお堂を囲むように飾られるたくさんの奉納のぼり旗や提灯で、地蔵尊は「赤」一色に染まる。幼い二人の身代りとなった伝説から別名血染めの地蔵とも呼ばれるが、古来より「赤」とは悪いものを避ける霊力を持つといわれる。地蔵尊に心静かに手を合わせると、その凄惨なはずの血の色の「赤」が、ほっこりとした心の温かさの「赤」に一瞬で変わるのである。