続・湘南のお地蔵さま(92)『道慶地蔵』
2024年7月8日 (江ノ電沿線新聞)

続・湘南のお地蔵さま(92)『道慶地蔵』
横浜市 前里町 中島淳一
京急黄金町駅横を流れる大岡川の上流へ五分程歩くと道慶橋がある。この橋は関東大震災後、国や横浜市が総力を挙げて再建した震災復興橋で、現存する三十七橋のひとつだが、そのたもとに「道慶地蔵」が祀られる。
この地蔵尊建立の由来は江戸初期に遡る。この地に道慶という僧が住み地蔵菩薩を信仰していたが、当時この辺りでは海が陸地に入り込んだ入り海を埋め立てて農地とする干拓事業が行われていた。しかし周辺には橋がなく村人は困っていたが、それを見た道慶は人々と共に苦労して橋を作った。それが現在の道慶橋のルーツで、その後人々は道慶の遺徳を偲びこの地蔵尊を祀ったという。合掌し正面をしっかりと見据え、強い意志を感じる近年再建された姿である。
また橋の親柱にある金属のオブジェは、東京スカイツリーのデザイン監修をした彫刻家の作で僧道慶の持っていた錫杖に由来するという。彼は自身の作品について「旅行く人の道しるべであったり、安全を祈るお守りであったり、何か人の精神に働きかけるものでありたい」と述べている。
「橋」は人と人、心と心を繋げる大切な空間だが、この道慶橋では併せて地蔵尊の「橋渡し」もあり、地域の人々はこれからも平穏な日々を過ごせるであろう。