江の島の植物・フヨウ
2024年09月20日 (坪倉兌雄)
フヨウ(芙蓉)Hibiscus mutabilisはアオイ科フヨウ属の落葉低木、原産地は中国で、わが国には古くに渡来して栽培され、関東南部から四国、九州、沖縄などの温暖な地域では野生化しています。寒地では冬季に地上部は枯れますが、春に新しい芽を生やします。江の島では江の島大師の境内や、サムエル・コッキング苑、民家の庭先などで、真夏から秋にかけて赤や白の花を見ることができます。根元から複数の幹が株立ちになり、樹皮は灰緑色、成長とともに灰白色になって、縦筋模様が見られ、幹から分かれ出た枝は緑色、全体に白い星状毛が見られます。葉は互生し、葉柄の長さ5~12㌢に、葉は直径10~20㌢で掌状に浅く3~7裂、裂片の先端はとがり、基部は心形で、葉のふちには鈍鋸歯があり、全体に白色の短毛や腺毛が見られます。
花期は7~10月、枝の上部の葉腋から出た蕾は5枚の萼片に包まれ、さらにその外側を10枚の細長い副萼片で囲まれ、星状毛と腺毛が密生します。花は朝開いて夕方にしぼむ1日花ですが、開花期中には途切れることなく花を咲かせます。花は淡紅色の大輪で直径10~14㌢、花弁は倒卵形で5個あり、縦筋が入って長さは4~5㌢になり、基部で合着します。雄しべの葯を保持する多数の花糸は、合着して筒状となり、そこから多数の葯が外側に向かって突き出ます。雌しべは雄しべの筒に包まれて伸び、柱頭は筒から突き出て5裂します。果実は蒴果で直径約2.5㌢の球形、表面には星状毛や腺毛などが生えます。熟すと5裂して長い毛のある種子をだします。名前の由来は、中国名の「芙蓉」に由来します(語源辞典より)。フヨウの園芸品種にスイフヨウがあり、フヨウとほぼ同じ時期に八重の花を次々と咲かせます。花弁は20~25個、朝は白で午後は淡黄色、夕方には紅色に変わり翌朝にしぼみます。名前は花が白色から紅色に変わるのを、酒の酔いにたとえたものです。
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