続・湘南のお地蔵さま(95)『ぼてふり地蔵』
2024年11月8日 (江ノ電沿線新聞)
続・湘南のお地蔵さま(95)『ぼてふり地蔵』
横浜市 佃野町 中島淳一
JR鶴見駅西口を出て豊岡通りを北へ進むと三角(みかど)交差点に出る。ここを起点とするレアールつくの商店街に入り少し行くと、数体の地蔵尊などが祀られるお堂があり、その一番左の像がぼてふり地蔵である。
この「ぼてふり」とは魚介類などを両側の籠等に入れて運ぶ天秤棒のことで、江戸時代から江戸城に魚を献上する漁村だった生麦を出発した行商人(ぼてふりさん)がここを通りお屋敷町に向かったという。その時にこの地蔵尊を倒していき「早く荷が売れたら帰りに起こしてあげるから」と願掛けをしたそうである。そんなことからいつしかぼてふり地蔵の名が付いたと伝わる。
しかし昭和二十年の大空襲で像は消失し、平成十五年に商店街のシンボルとして新たに建立された。不況に立ち向かうためでもあったという。作者は山梨県在住の石彫家浜田彰三氏で、彼は石巻市の旧大川小学校に慰霊の母子像「子まもり」を贈ったことで有名である。
とてもやさしい笑顔を浮かべ合掌し、手作りの天秤棒を足元に置いて前を通る買い物客を見守るぼてふり地蔵。その姿は、この昭和の香り漂う昔ながらの人情商店街と共に生きる多くの人々の永遠のアイドルである。