江の島の植物・ヒナタイノコズチ
2024年12月30日 (坪倉兌雄)
ヒナタイノコズチ(日向猪子槌)Achyranthes bidentata var. fauriei はヒユ科イノコヅチ属の多年草で、本州、四国、九州に分布し、日当たりのよい道端や荒地などで普通に見られる多年草です。江の島では空き地や道ばたなどで見ることができます。茎は太くて紫褐色で、基部は赤みを帯び、高さは40~90㌢、4稜形で節はやや膨らみ、短毛が見られます。葉は単葉で対生につき、質は厚くて光沢はなく、裏面はやや白っぽくみえます。長さ10~13㌢の長楕円形、全縁でときに波打ち、先端はとがり、若葉には毛が多く白っぽく見えます。花期は8~11月、枝先に穂状花序をだし、目立たない緑色の小さい花を密につけます。花のつく茎は白毛で覆われ、花は枝に対して立ち上がるようにしてつきます。花に花弁はなく、萼が花弁状になってつきます。
花被片は5個あり淡緑色で先はとがり、雌しべは1個、雄しべは5個あります。花が終わると、さらに熟して下向きになり花序の軸に接着します。果実は花被片に包まれた胞果で、長さは約2.5㍉の長楕円形、刺状の苞によって、動物や人の衣服について運ばれます。名前の由来は「日向に生え、茎の太い膨らみをイノシシの子供の大きな膝頭に見立てて、物を打つ工具の槌に例えたもの」とされています。根などには薬効成分があり、生薬ではゴシツ(牛膝)と呼ばれ、鎮痛、リュウマチ、利尿、腫瘍や抗アレルギーなどに効果があるとされています。 ヒナタイノコヅチの仲間にイノコヅチ(猪子槌)があり、林内や竹藪など、あまり日の当たらないところに生え、別名でヒカゲイノコヂ(日陰猪子槌)とも呼ばれています。江の島でも、日の当たらない湿ったところで見ることができます。葉は対生し長さ5~15㌢の長楕円形で、葉質は薄く先は尖ります。枝先に細い花穂をだし、緑色の小さな花をつけますが、全体的に毛が少なく、花もまばらにつくことから見分けることができます。
【写真&文:坪倉 兌雄】
記事編集に際しては諸権利等に留意して掲載しております。 2024年12月30日