湘南の野鳥(31)「都鳥」とも言われるユリカモメ
2024年4月25日 (itazu)
ユリカモメ(百合鴎)は、カモメ科に属する鳥で、冬鳥として日本に渡来し、春には北帰します。藤沢では冬の間、境川下流でよく見かけますが、春になって今は、殆ど姿は見られません。

(写真提供:高柳玲子氏)

(写真提供:高柳玲子氏)
体長: 約40cm、翼開張: 約93cmで足とくちばしが赤色で、冬羽では頭部が白く、目の後ろに黒い斑点が特徴です(写真上左)。夏羽になると頭部が頭巾状の黒褐色になります。白いアイリングがめだちます(写真上右)。
ユリカモメは、海岸や河川、沼地などで群れを作り生活します。魚や甲殻類を主に食べますが、雑食性で昆虫や種子、人間の食べ物も摂取することがあります.
「都鳥」ともいわれる
日本の古典文学に登場する「都鳥」は、ユリカモメを指しているとされています。このことを有名にしたのは、在原業平の『伊勢物語』です。業平が隅田川のほとりで、都を思い詠んだ歌があります。
「名にしおはばいざ言問はむ都鳥わが思う人はありやなしやと」
(意訳:都鳥という名前を背負っているのならばちょっと聞いてみよう。私の恋しい人は今も元気でいるか)
この『伊勢物語』の「都鳥」は、その叙述からユリカモメのこととするのが通説となっています。
一方、実際の「都鳥」(写真右2枚)は、ユリカモメとは別、チドリ科の冬鳥です。どちらも、足とくちばしが赤色で似ています(体長45㎝、背羽は黒い)。都鳥は、渡来が局所的であまり見かけないことと、「都鳥」の雅名(詩歌で使われる名)が印象的であるため、よく見かけるユリカモメを都鳥と呼ぶことが文学の世界では行われてきたようです。


飛来が局所的であまり見かけない都鳥
2枚とも境川で撮影された貴重な写真
ユリカモメは東京都の「自治体の鳥」
ユリカモメの名前の由来は、ササユリやテッポウユリのように白いきれいな鴎(かもめ)からきているようです。「都鳥」の名前の由来は、不明です。(万葉集で大伴家持が詠んだ歌に「都鳥」あり、これが、一番古く、語源といわれます。)
文学の世界での「都鳥」の名前が有名になっていたことから、ユリカモメは東京都の「都」の鳥に指定されています。

(写真提供:高柳玲子氏)
参照資料:ヤマケイ文庫「野鳥の名前」、「見たくなる!日本の野鳥420」(主婦の友)、ウィキペディア他
記事編集に際しては諸権利等に留意して掲載しております。 ☑ 2024年4月23日