江の島の植物・シラン
2025年04月30日 (坪倉兌雄)

シラン(紫蘭)Bletilla striataはラン科シラン属の多年草で、関東以西、四国、九州、沖縄に自生し、やや湿った場所や林内などで見ることができ、観賞用としてもよく栽培されています。江の島では住宅の庭先、江の島大師の境内やサムエル・コッキング苑などでも見ることができます。地下に白色多肉の偽鱗茎をもち、1年に1球ずつ増えます。草丈は30~70㌢、葉は茎の下部に5~6枚互生し、披針形~長楕円形で縦皺が目立ち、長さ20~30㌢、幅は1~5㌢に、葉の基部は鞘となって茎をだきます。花期は4~5月、中心部から伸びた茎先に紫紅色の花を5~7個まばらにつけます。外花被片(萼)3枚と内花被片(花弁)2枚は長さ2~2.5㌢の倒披針形ですが、下部につく内花被片は唇弁になり、筒状に開きます。





唇弁の長さは他の花被片とほぼ同じですが、筒状になってその先端は浅く3裂し、縁は波状になります。筒状に開いた唇弁には縦筋があり先端は浅く3裂します。この唇弁の中央裂片は昆虫の着地場所となり、ここから雄しべと雌しべが合体したような蕊柱(ずいちゅう)へと昆虫を導きます。受精すると花弁の下部にある子房が膨らみ果実に変わります。今回の観察中に、空き地の草むらに咲いている白色のシランを見かけました。シランは晩秋には葉を落として休眠します。名は漢名の「紫蘭」の音読みで、花の色から紫蘭(シラン)と名付けられたとされています。
シランの偽鱗茎には多糖類のブレチラーグルコマンナンなどの成分を含み、生薬では白芨(ビャキュウ)と呼ばれ、ひび、あかぎれ、切り傷や腫物などに効果があるとされています
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