江の島の植物・センダン
2025年05月10日 (坪倉兌雄)

センダン(栴檀)Melia azedarachはセンダン科センダン属の落葉高木で、本州(伊豆半島以西)、四国、九州、沖縄の暖地の海岸近くに自生し、樹高は5~15㍍以上になります。幼木の樹皮は赤褐色ですが、成長すると暗褐色となり、筋模様が目立ちます。江の島では北緑地などで、手にとって見ることができます。太い枝を四方に広げ、葉は大形で互生し、長さ30~80㌢、幅25~70㌢の2~3回の羽状複葉、葉柄には溝があり、長さは10~30㌢、基部は左右不揃いで太く膨らみます。小葉の長さは3~6㌢、幅1~2.5㌢の卵形または卵状楕円形で、葉縁には不揃いの鋸歯があり、葉先は長く尖ります。葉の表面は濃緑色ですが、裏面は淡緑色を呈します。花期は5~6月、葉腋から10~15㌢の集散花序をだし、淡紫色の小さな花を多数開きます。





萼片は5個あり、褐色の短毛が密生します。花弁は5個で長さ0.8~1㌢の倒披針形形で平開し、雄しべは10個で紫色の花糸が合着して筒状になり、その上部の内側に黄色の葯が付きます。雌しべは1個で雄しべ筒より短く、花柱は円柱状で柱頭は丸くなります。果実の長さ1.5~2㌢の楕円形、10~12月に淡黄色に熟し落葉後にも枝に残ります。果実の中の核果は堅く稜があり、その中に5個の種子が入ります。乾燥した果実は、生薬では苦楝子(くれんし)と呼ばれ、整腸や腹痛に効果があるとされています。名前の由来は、梵語candana(栴檀那)からの変化。また実が一面に多く付くことから「千珠(せんだま)、などの諸説があります。核は数珠の珠に、材は家具・器具・楽器・木魚などに用いられます。万葉集では、センダン(栴檀)の古名「棟(あふち)」で詠まれています。
妹(いも)が見し 棟(あふち)の花は 散りぬべし 吾が泣く涙 いまだ干(ひ)なくに 巻五 七九八、 山上憶良(やまのうえのおくら)
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