江の島の植物・トウネズミモチ
2025年05月30日 (坪倉兌雄)

トウネズミモチ(唐鼠黐)Ligustrum lucidumはモクセイ科イボタノキ属の常緑高木で中国原産、わが国へ渡来したのは明治初期とされ、関東地方以西、四国、九州、沖縄に分布し、江の島では広場の片隅や、江の島大師の境内などでも見ることができます。樹高は10~15㍍になります。樹皮は滑らかで灰褐色、皮目があり、成長すると縦に裂け目が入ります。葉は対生し、縁は全縁でネズミモチより大きく、日にかざすと、葉脈が透けて見えます。葉は厚い革質で卵状楕円形、長さ6~12㌢、幅3~5㌢、基部近くの幅が広くて、しだいに細くなり先端は長く尖ります。葉の表面は濃緑色で光沢があり、裏面は淡緑色。花期は5~6月、当年枝の先に長さ10~20㌢の大形の円錐花序をだし、小さな白い花を多数つけます。花冠は筒状漏斗形で長さは3~4㍉、4中裂し平開します。





雄しべは2個で、葯は花冠から突き出ます。雌しべの花柱は花筒から少し突き出ます。果実は長さ8~10㍉、直径5~6㍉の楕円形で、晩秋~冬季に黒紫色に熟して白い粉をかぶります。名前の由来は中国(唐)原産で、熟した果実がネズミの糞に、葉がモチノキの葉に似ることから、トウネズミモチ(唐鼠黐)と呼ばれています。葉は厚く濃緑色で光沢があり、塩害にも強く、庭木や生垣、公園樹などによく用いられていますが、野生化したものも多く見られます。トウネズミモチの果実や葉には薬効成分があるとされています。黒紫に熟した果実を乾燥したものを生薬名で女貞子(じょていし)と呼び、肝臓や腎臓などを丈夫にするとされ、腫物や痛み止めなどには生の葉を煮て柔らかくし、患部に貼ると効果があるとされています。
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