続・湘南のお地蔵さま(102)『大磯の子育地蔵』
2025年6月9日 (江ノ電沿線新聞)

続・湘南のお地蔵さま(102)『大磯の子育地蔵』
大磯町大磯 中島淳一
昭和の香り漂う大磯駅舎を出て右へ進み、国道手前を左に入る。二本目の細い道を右折すると愛宕神社手前に石造物群があり子育地蔵が祀られる。
像高五十七センチ、蓮台に乗り微笑を浮かべ右手に錫杖左手にだるまを持つ子どもを抱き、足元には宝珠で遊ぶ子どもや巾着を付けた子どもたちがお地蔵さまに纏わりつき強い絆が見て取れる。衣文の線も流れるように美しくまた光背には雲型が見事に彫られている。一流の石工の作とわかるが、光背横にはその名が彫られ武藤熊五郎とある。同町の大運寺にある徳本(とくほん)念仏塔(一八一八年造)と同じ石工である。
この像は現在の場所に移る前は、塔前寺という寺があった近くの茶屋町公民館の敷地にあった。
大磯は明治以降多くの政治家や財界人、文化人が居を構えたが、その一人伊藤博文は大磯駅から邸宅の滄浪閣まで、当時メインストリートだったこの石畳の道を人力車で通ったという。彼もこの子育地蔵を見ていたかもしれない。
地蔵尊光背裏から大きなあやめの花が見事に顔をのぞかせていた。訪れた日は町内でオープンガーデンという民家等の庭を公開するイベントが行われていたが、お地蔵さまも特別参加しているようだった。