江の島の植物・ネズミモチ
2025年06月30日 (坪倉兌雄)

モクセイ科ネズミモチ(鼠黐)Ligustrum japonicumはイボタノキ属の常緑小低木で、関東地方以西、四国、九州、沖縄の、暖地の山地に生え、幹は直立しよく分枝し、樹高は3~7㍍になります。江の島では参道わきや江の島大師の境内などで見ることができます。樹皮は灰褐色で皮目が目立ちます。葉は単葉で対生し、長さ4~10㌢の卵状楕円形、革質で厚く全縁で光沢があり、両端ともやや尖ります。葉の裏面は淡黄緑色で、日にかざしても側脈は見えません。葉柄は紫褐色で長さ5~12㍉。花期は5~6月、本年枝の先に5~12㌢の円錐花序をだして、白い小さい花を多数つけます。花冠は長さ約5㍉の筒状漏斗形で4深裂し、裂片は平開しますがやがて反り返ります。雄しべは2個で、雄しべと花柱は花冠から少し突き出ます。





果実は楕円形で長さ7~10㍉、10~11月に黒褐色に熟します。ネズミモチの名の由来は、果実を鼠の糞に見立て、木がモチノキに似ている、ことによるとされています。同じイボタノキ属で、ネズミモチより一回り大きい中国原産のトウネズミモチがあります。ネズミモチの葉の側脈は透けませんが、トウネズミモチの葉は日にかざすと葉脈が透けて見えます。また前者の葉先は鈍く尖り、後者はやや鋭く尖ることから見分けることができます。ネズミモチは塩害・公害に強く、公園樹、庭木、生垣や道路などの緑化などにも用いられています。熟した果実には、マンニット(マンニトール)、ウルソール酸などの薬効成分があり、これを日干しにしたものを生薬名で「和女貞子(ワジョテイシ)」とよび、病後の回復や虚弱体質改善などに用いられていました。しかし現在はネズミモチ由来の「和女貞子」は見られなくなり、本来の中国原産トウネズミモチ(唐鼠黐)由来の果実が、生薬「ジョテイシ」として流通しています。
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