江の島の植物・イラクサ
2025年09月10日 (坪倉兌雄)

イラクサ(刺草)Urtica thunbergianaは本州、四国、九州に分布する多年草で、雌雄同株。半日陰のやや湿った場所に生育し、江の島では半日陰の空き地や、参道わきのやや湿った場所で見ることができます。茎は四角形で高さは30~80㌢。葉柄は長く、つけ根に小さい托葉があります。葉は広卵形で基部は心形、対生して長さは5~13㌢、縁には粗い欠刻状鋸歯があります。茎や葉柄、葉の表面などには刺毛(しもう)があり、触ると独特の鋭い痛みを感じます。葉の裏面は葉脈が目立ちます。花期は9~10月、茎頂部に穂状花序をつけ、上部に雌花穂がつき、下部に雄花穂がつきます。花は淡緑色で、いずれも花弁はありません。雄花の花被片は4個で、雄しべは4個。雌花の花被片は4個で、花柱は1個、花後に内側の花被片2個が大きくなって果実を包みます。





名前の由来は、葉や茎にイラ(刺)があり、触ると強い痛みを感じることによるとされています。筆者も観察時にうっかり素手でさわり、指に鋭い痛みを感じ、この痛みが完全にとれるのに5日間を要しました。この刺毛は一般に見られる植物の毛とは異なり、基部にギ酸を含む嚢があり、触れると嚢が破けて液体が皮膚につき、強い痛みを感じます。かつてはイラクサの茎の皮から繊維をとり、織物などの原料にしたとされています。
イラクサには各種のビタミンやカルシュウム、鉄分など多くの栄養素を含み、葉は和え物や炒め物などの食材に用いることができます。葉や茎を採取するときは、素手で直接触れないように手袋などを用い、摘み取ったあと乾燥させ刺毛の刺激性を除いて保存することもできます。
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