続・湘南のお地蔵さま(107)『三溪園の大漁地蔵』
2025年11月7日 (江ノ電沿線新聞)

続・湘南のお地蔵さま(107)『三溪園の大漁地蔵』
横浜市 本牧
(取材:中島淳一)
根岸駅からバスに乗り本牧で下車。道路を渡り案内通りに進むと十分程で三溪園入口に着く。ここは明治時代末から大正時代に製糸・生糸貿易で財を成した横浜の実業家原三溪が、東京湾に面する本牧の土地約五三〇〇百坪に造り上げた日本庭園で、多くの歴史的建造物と四季折々の自然を堪能できる名園である。
入口を入り大池の左岸を進むと、旧京都燈明寺本堂の先で大漁地蔵と出会う。総高一一七・五センチ、右手に錫杖(欠失)、左手に宝珠を持ち二重蓮華座に左脚を踏み下げて坐す。江戸時代の作と思われ、お顔は理知的で衣文や袈裟の表現も丁寧で美しく、一流の石工の作である。
園内には古くは伝東大寺伽藍石から朝鮮半島のものまで多くの石造物があるが、伝来は不明なものが多い。この大漁地蔵も同じく伝来は不明だが、昔からの漁師町だった本牧にはふさわしい名前と思える。ただ私には、この地蔵尊が通常と違い北を向いて祀られることが気になった。南方を浄土とする地蔵尊ゆえのことなのか。
久々に訪れた三溪園は訪日外国人ばかりが目立った。開国以来この本牧周辺にはその風光明媚な土地柄から外国人の住居や専用の海水浴場があった。大漁地蔵がもし永くこの地に祀られていたなら、その懐かしい外国人との新たな出会いをどう感じているのだろう。












