続・湘南のお地蔵さま(109)『谷戸(やと)池の子育て地蔵』
2026年1月8日 (江ノ電沿線新聞)

続・湘南のお地蔵さま(109)『谷戸(やと)池の子育て地蔵』
(取材:中島淳一)
大船駅西口を出て正面の坂道をまっすぐに進む。玉縄交番先を右折し、一五〇メートル程行くと小さなお堂があり、子育て地蔵が祀られる。すぐ近くにはこの地域の地名から名付けられた谷戸池があり、周辺の住宅地と不釣り合いな空気感を醸し出しているが、昔は周辺の田畑を潤す灌漑用の池だった。
この子育て地蔵は、江戸時代の末頃に地元で病気になる子どもや幼くして亡くなる子どもが多かったので、地域の長老たちが協力し造立したと伝わる。右手に錫杖左手に宝珠を持ち、後補と思われる彩色が施される。穏やかなお顔に大きな鼻と耳が印象的で、衣文の彫りは浅めだが自然な流れを表わす。とても存在感のあるお地蔵さまである。
作者は地元岡本に仏所を構えた市川茂助(茂輔)と伝わる。茂助は幕末から一八八三年頃に市内今泉の称名寺、上町屋の泉光院の仏像などの修理や大和市蓮慶寺弘法大師像を造立した仏師で、自ら「鎌倉郡岡本村仏師」と名乗っている。
茂助が活躍した時代は廃仏毀釈の嵐が全国に吹き荒れ、仏像にも仏師にも苦難の時であった。しかし茂助は伝統ある鎌倉仏師の末孫としての誇りを持ち、故郷の子どもたちのために鑿(のみ)をふるったのであろう。












