オオイタビは、気根を出してほかの木や岩などにはいのぼりますが、江の島でもブロック塀や樹木などに絡まって生育しています。
江の島の植物・蔓性常緑木本≪オオイタビ≫
2014年11月11日 (写真&文:坪倉 兌雄
オオイタビ(大崖石榴) Ficus pumila クワ科イチジク属
西緑地わきの塀に絡まって生育するオオイタビ
オオイタビは房総半島以西の暖地に生え、気根を出してほかの木や岩などにはいのぼりますが、江の島でもブロック塀や樹木などに絡まって生育しているのを見かけます。雌雄異株で、葉は互生し長さ4~10㌢の楕円形~長楕円形で基部はまるく、革質でふちは全縁、表面はなめらかで光沢があり、裏面は灰白色で脈が網状に浮きでて目立ち、幼木の葉は1㌢前後と小さく、同属のヒメイタビの葉によく似ています。6~7月、葉腋に倒卵状球形で緑色の花嚢を1個つけます。花嚢の長さは3~5㌢、雄株の花嚢の中では先端の入り口付近に雄花が咲き、内部に雌花が咲きますが、この雌花にはイチジクコバチ科の幼虫が寄生して虫えい花(虫こぶ)となり、果嚢に熟しても食用にはなりません。雌株の花嚢の中には雌花のみ咲き、紫色に熟して柔らかくなった果嚢は食べられます。
アメリカディゴに絡まったオオイタビ
オオイタビの花嚢
サムエルコッキング苑入り口
葉の裏の葉脈が目立つ
イタビカズラの葉は細長く先端が尖る
和名の由来は大葉のイタビで「オオイタビ」、イタビはイヌビワの別名です。クワ科イチジク属の仲間にはオオイタビの他に雌雄異株のイチジク、イヌビワ、イタビカズラ、そして雌雄同種のアコウ、ガジュマルなどがあり、いずれも枝や茎などを傷つけると白い乳液がでます。これらのうち江の島に自生しているのは、落葉低木のイヌビワと常緑つる性のイタビカズラです。イタビカズラの葉は細長くて先が尖るので、オオイタビと区別できます。これらのイチジク属の花は一般の植物とは異なり、いずれも花は花嚢内部に咲き(陰頭花序)、外部から見ることができません。また受粉はそれぞれ特定のイチジクコバチ(以下コバチ)が媒介し、雄株の花嚢にある雌花の子房がコバチの住み家(虫えい花)となり、その胚珠を食べて成長したコバチは、花嚢を出るとき出口付近に咲く雄しべの花粉をつけて、他の花嚢に入り雌花に受粉します。このようにして、コバチとイチジク科の植物はお互いに相手の存在なしでは生存していくことができない密接な共生関係にあります。
記事編集に際しては諸権利等に留意して掲載しております。 2019年3月22日