続・湘南のお地蔵さま-6 『ジゾースさま』
2017年6月1日(記事:江ノ電沿線新聞6月号)
『ジゾースさま』 大磯町 大磯 中島淳一
今回登場するお地蔵さまも、前回紹介した澤田美喜記念館所蔵の隠れキリシタン関連の遺品である。その名を「ジゾースさま」という。<br />戦国時代に北九州で活躍したキリシタン大名大友宗麟が所有していたと伝わる像で、姿はお地蔵さまであるが、胸には大きな十字架、そして左右の掌の穴と、着物に表わされる文様のような三つの穴は釘の跡を表わすといわれ、この像がキリスト像であることを示している。<br />像高二二・七センチ、素材は銅で、その上に黒漆がかけられている。「ジーザス」に近い名前で呼ばれているが、額に仏像の特徴である白毫(びゃくごう)を表し、着衣の裾の表現や手の印相(いんぞう)も立ち姿の仏さまの特徴と酷似している。この像を記念館で初めて拝した時、その存在感に圧倒され、私のイメージするお地蔵さまの姿はそこに見出せなかった。しかし像の特徴を細かく見ていくと、人々の罪を背負いつつ命を落としたキリストの姿は、慈悲深いお地蔵さまの姿そのものであることを確信した。<br />この澤田美喜記念館は小さな展示室と礼拝堂から成るが、そこには遠藤周作の「沈黙」の世界を彷彿とさせる厳しさと、ママちゃまと呼ばれた夫人のやさしさが共存する、世界に誇れる施設である。ぜひゆっくりと訪れてほしい。(澤田美喜記念館所蔵)
※江ノ電沿線新聞2017年6月号掲載コラムをえのぽに転載しました。
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