江の島の植物・イヨカズライヨカズラはキョウチクトウ科カモメヅル属の多年草で、江の島ではサムエル・コッキング苑から岩屋洞窟に向かう、山側の草むらの中で見ることができます。
江の島の植物・イヨカズラ
2018年7月9日 写真&文: 坪倉 兌雄
イヨカズラ(学名Cynanchum japonicum)はキョウチクトウ科カモメヅル属の多年草で、本州、四国、九州、小笠原諸島に分布し、海岸に近い草地に生えます。江の島ではサムエル・コッキング苑から岩屋洞窟に向かう、山側の草むらの中でも見ることができます。草丈は30~60㌢で茎は直立しますが、上部は長くのびてつる状になることもあります。葉柄は短く、葉は対生して全縁、葉質はやや厚くて表面には光沢があり、裏面の葉脈が目立ちます。葉の長さは5~11㌢、幅は3~6㌢の楕円形で、葉先は短くとがり、葉脈上に短毛があります。花期は5~7月、上部の葉のわきに散形花序をだして、およそ8㍉の小さな花を多数開きます。花冠は淡黄白色で、5深裂してほぼ平らに開きますが、裂片はやや反り返ります。中央にはずい柱があり、周りを5裂した副花冠が囲みます。萼は5深裂します。
花の後にできる実は袋果で、およそ5~7㌢の広披針形、秋には割れて冠毛をつけた種子が飛び出ます。冠毛とは萼の変形したもので子房の頂端にあり、毛状になって風による種子の散布に役立ちます。和名の「伊予蔓」は、伊予(愛媛県)で発見されたことに由来し、別名をスズメノオゴケ(雀の麻小笥)で呼ばれています。麻小笥とは麻を入れておく器のことで、袋果がこの器の形に似ることから、牧野富太郎博士(1862~1957)が命名したとされています。カモメヅル属の仲間には、イヨカズラの他にイケマ、クサタチバナ、フナバラソウなどがあり、ガガイモ(ガガイモ属)と同じで、熟して乾燥した袋果は放射状に開き、冠毛をつけた種子は風にのって散布されます。
2018年7月9日